読書アンケートから

 ハクモクレンのつぼみが膨らみはじめてきた。白いつぼみは空の方へ向いている。

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 先日、みすず書房のPR誌「みすず」1・2月合併号の「二〇一九年読書アンケート」を見て、読んだことのある本を誰か言及していないか、と探したところ、杉田英明氏が若菜晃子著『街と山のあいだ』という本を挙げていました。

《地味な山や低い山、無名の山にも楽しさと安らぎを見つける著者の気持ちがさっぱりした文章のあいだから伝わってきて、読む者を幸福にしてくれる本》

 池内紀さんが、『散歩本を散歩する』という本で、若菜晃子さんの『徒歩旅行』という本を評していた。まだ『徒歩旅行』は手にすることはないのですが、『街と山のあいだ』を読むことができました。

 

街と山のあいだ

街と山のあいだ

  • 作者:若菜晃子
  • 発売日: 2017/09/22
  • メディア: 単行本
 

 

 

散歩本を散歩する (散歩の達人POCKET)

散歩本を散歩する (散歩の達人POCKET)

  • 作者:池内紀
  • 発売日: 2017/06/19
  • メディア: 単行本
 

 

対談・映画について私たちが語ること

 『望星』3月号に、平川克美川本三郎の「映画について私たちが語ること」という対談が掲載されていました。新藤兼人の映画『銀心中』(しろがねしんじゅう)に出てくる花巻電鉄の電車のことや川島雄三監督の映画『銀座二十四帖』で昭和30年(1955年)の東京の銀座の話をはじめ、とても面白く興味深い対談でした。立ち読みコーナーがあります。
 参照:特別対談 http://www.tokaiedu.co.jp/bosei/pdf/2003_ren.pdf

 

花一本あり人これを四方より

 カワヅザクラ河津桜)が満開になった。早咲きのサクラ。風に吹かれて花びらがゆれている。小鳥が枝から枝へと動き回っている。黄緑色の羽(はね)で目の周りが白い小鳥。メジロ(目白)だった。一本の桜の木に、メジロがいて、人々がカメラを向けている。

 

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 「昼眠く咲きふゆるらし庭桜」

 「我が門の花に馬車止め訪(おとな)ふは誰」

 「花一本あり人これを四方より」

 松本たかしの昭和十六年(1941年)の俳句です。

あなづりし道に迷ひぬ探梅行

 晴れた青空に遅咲きの白梅が咲いていた。今が満開で、とても良い香りがする。

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 「枯木中行きぬけたりし雲一つ」

 「あなづりし道に迷ひぬ探梅行」

 松本たかしの昭和十年(1935年)の俳句です。

 

 

PR誌から

 白水社タブロイド版のPR誌『パブリッシャーズ・レビュー 白水社の本棚』2020年冬号の一面の「愛書狂」が、伊藤整の『日本文壇史』(講談社文芸文庫)は読み始めると止められない、といって、若山牧水の恋をめぐって書いている。「愛書狂」の筆者は俵万智の『牧水の恋』を並行して読んでいた。この評伝の俵の大阪弁「惚れてまうやろ!」に驚き、《調べたら俵は幼少期、大阪で育っている。しかも門真市生まれなら、枚方生まれの私とは同じ京阪電車利用者で共通する。「同じだね」と知ったからこの日が私の「俵万智記念日」。》

 このコラムを目にすると、俵万智の本を読みたくなりますね。

 

小冊子から2

 先月、図書館で「久我山通信」No.22を入手しました。「佐々木基一研究」のサブタイトルのある小冊子です。目次が、「評伝 佐々木基一 (五)」(杉田達雄)、「わが道しるべーー久保覚」(桑野隆)、「長谷川四郎小沢信男、そして佐々木基一」(渡辺喜一郎)とあります。「久我山通信」発行人・福島紀幸氏の編集後記を一部引用すると、

久保覚ーー1988年に61歳で急逝した、出版編集者であり、文化活動家・思想運動家であり、なによりも”本の人”だった。(彼は、「子どものころのぼくの理想主義的人間像は、本の収集家だった。たえず本屋をうろつきまわったせいか、本の収集をめぐる話や文章には、思わず心を惹かれてしまう」と言っている)。その久保覚の”人と仕事”の全体像を誰かに書いてもらいたい。急逝以来、そう願ってきました。本号に寄稿いただいた桑野隆氏の「わが道しるべーー久保覚」が、その願いに応える端緒となることを希っています。》(中略)

久保覚佐々木基一には、本号ではふれられていませんが、いくつもの接点があります。しかし、佐々木との接点の有無にかかわりなく、小紙は、さまざまな分野の方々からの寄稿を願っています。》

 『ぼくの伯父さん』の著者・福島紀幸氏が発行されている「久我山通信」のことは今まで知りませんでした。長谷川四郎小沢信男佐々木基一に関心をもたれている方は手に取ってみられてはいかがでしょうか。

 

ぼくの伯父さん: 長谷川四郎物語

ぼくの伯父さん: 長谷川四郎物語

 

 

 

 

小冊子から

 時代を鋭く突くサイの角
今も昔も気になる本に犀のマーク
      晶文社
 創業記念60周年記念フェア

 先日、書店のブックフェアで、上記のようなパネルを掲げた晶文社のブックフェア本が展示されていました。「晶文社60周年記念冊子」が置いてあり、無料配布の小冊子でした。手に取って見ました。

 小冊子の内容は、

創業60周年にあたって
略年譜1960―2020
特別寄稿・内田樹岸本佐知子西村佳哲吉本ばなな

「ご挨拶――創業60周年にあたって」より一部引用すると、


《小社は本年二月三日に、創業60周年をむかえます。

創業は、一九六〇年(昭和三五年)。創業出版は寺田透『理知と情念』、大岡信『抒情の批判』の二著でした。創業のあいさつを、初代社長中村勝哉とともに会社設立に加わった小野二郎は、次のように記しています。

「私どもは、このたび晶文社という名のささやかな書肆を開きました。俗にいう山椒は小粒でもピリリと辛いの意気です。もっとも先端的で、同時にもっとも伝統的なもの、要するに語の根源的な意味でのラジカルな出版物を出したいというのが私どもの願いです。」》

 特別寄稿の岸本佐知子さんの「この話、誰にもしたことないんだけど」という寄稿文を興味深く読みました。