ラジオの書評

 朝、NHKラジオの番組の「著者からの手紙」で、『「山奥ニート」やってます。』の著者・石井あらたさんが出演。この作品は私たちのこうでなくてはいけないという思い込みをはげしく揺さぶってきます。お金はどうしているんですか。と聞かれるそうですが、とても興味深い話でありました。

 ニートは社会の余禄で、社会に暇を持て余しているひとがいるのが健全な社会であります。といった談話も展開される。

https://www.nhk.or.jp/radio/player/ondemand.html?p=5642_07_918672


                         
 ラジオ深夜便からは、「ないとガイド」の「やっぱり本が好き」という番組で、書評家の永江朗さんの出演であった。今月のおすすめ本、三冊の書評を聞く。
 一冊目は、多和田葉子著『星に仄めかされて』。
 二冊目は、内田洋子著『サルデーニャの蜜蜂』、イタリアのサルデーニャの蜂蜜農家に訪ねて行く見事なエッセイ。エッセイの一部が朗読された。
 三冊目は、藤原新也著『日々の一滴』、エッセイであり時事評論としても読める。

 

 

「山奥ニート」やってます。

「山奥ニート」やってます。

 

 

 

星に仄めかされて

星に仄めかされて

 

 

 

サルデーニャの蜜蜂

サルデーニャの蜜蜂

 

 

 

日々の一滴

日々の一滴

  • 作者:藤原新也
  • 発売日: 2020/03/27
  • メディア: 単行本
 

 

飛ぶ教室「おもしろがる事のたいせつさ」

 NHKラジオの夜開く学校、「高橋源一郎飛ぶ教室」を聴く。今週のゲストが建築家の堀部安嗣さんで、はじめに高橋源一郎自身の今までに住んだ家についての話からはじまりました。生活の拠点にした家の数を数え(引っ越しで三十数か所)、(大阪、東京、尾道)その家にまつわる人の思い出を振り返ることから、家のあった土地その記憶が人間にとって大切なものであることを語り、瀬戸内寂聴の長編小説『場所』という本も紹介される。瀬戸内さんがかつて愛した男たちが住んでいた土地を訪ね歩く話を書いています。家や土地の記憶のない人は戻るべき場所のないさびしい人間です。大切な土地の記憶のない人間は寂しいものです。感慨深そうに自分の経験にふれてその気持ちを述べる。

 今週の「秘密の本棚」は、『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』という斉藤倫の本でした。高橋源一郎さんが朗読をする。なかなかの名調子。創作童話で詩人の詩のアンソロジーでもあり、番組での耳で聴いた長田弘の詩の一行、アイスクリームは死ね? ってどんなことなんだ。
 すごい詩ですね。すごいおじさんですね。詩や文学がおじさんの役割をしてくれている。と司会の高橋源一郎小野文恵さんの二人が語り合う。前半は、ここまで。

 間奏曲は大貫妙子の「黒のクレール」。

www.youtube.com

 後半の「きょうのセンセイ」のゲストは建築家の堀部安嗣さん。高橋源一郎がその建築哲学を聞く。阿佐ヶ谷に建設した八坪の土地に一万冊の蔵書を収めたという社会学者・松原隆一郎さんの書庫付きの家をめぐり堀部安嗣さんにインタビューする。

 番組は6月19日まで配信があります。
https://www.nhk.or.jp/radio/player/ondemand.html?p=6324_01_855191

 

 

 

文学さんぽ「谷崎潤一郎」

 

 ヤマモモ(山桃)の木に実が紅く色づいています。熟した実は地面に点々と落ちていました。


 ヤマモモ科の常緑高木。本州中部以西の山地に多く、高さ約一五メートル。葉は長楕円形で、革質。雌雄異株。四月ごろ開花し、雄花穂は黄褐色、雌花穂は花柱が紅色。実は球形で、夏に紅紫色に熟し、食用。樹皮は染料、漢方では楊梅皮(ようばいひ)といい薬用。楊梅。しぶき。  『大辞泉

 

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 5月30日のNHKラジオの土曜さんぽ、島田雅彦の文学さんぽ「谷崎潤一郎」を聴きました。6月29日まで配信があるようです。
https://www.nhk.or.jp/radio/player/ondemand.html?p=5642_16_38662

 関東大震災地震から逃げるという選択で関西に移住をした谷崎潤一郎とその作品について島田雅彦の文学さんぽ「谷崎潤一郎」が放送された。その興味深い話を聴きました。『吉野葛』、南朝に興味を持った谷崎が負け組のサイドに立って、敗者の側からの口承文学の系譜など話される。元人妻から習ったブルジョア船場言葉、よそ者の目で関西をみた谷崎の文学を鑑賞するうえで欠かせませんね。などと島田雅彦さんの話を聴いたのだった。

 参照:『吉野葛

http://aozora.binb.jp/reader/main.html?cid=56867

玻璃盤(はりばん)に露のしたたる苺(いちご)かな

 クルミ(胡桃)の木が、丸い実を付けていました。まだ黄緑色をしていて、さわると硬いですね。

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 「更衣(ころもがえ)同心衆の十手かな」
 「玻璃盤(はりばん)に露のしたたる苺(いちご)かな」
 「能もなき教師とならんあら涼し」

 明治36年(1903年)の夏目漱石の俳句です。玻璃盤とは、ガラスの鉢をいう。

 

 筑摩書房のPR誌、「ちくま」6月号にサプライズがありました。金井美恵子さんの新連載「重箱のすみから」が今月号からはじまりました。今月号のタイトルは、「医者の言葉、小説家(と批評家)の言葉①」。

http://www.chikumashobo.co.jp/blog/pr_chikuma/entry/1503/

あるシリーズに「はまる」

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 三月はじめに、黄色の小さな花が房のようになって咲いていたサンシュユ(山茱萸)の木が実を付けていました。実はまだ黄緑色をしています。

 ミズキ科の落葉小高木。葉は楕円形。樹皮ははげやすい。早春、葉より先に黄色の小花を密につける。実は熟すと赤くなり、漢方で滋養強壮薬とする。朝鮮半島・中国の原産で、庭木にする。  『大辞泉

 講談社のPR誌『本』6月号の多和田葉子の新刊エッセイ「物語は続く」に、《あるシリーズに「はまる」という現象はかなり昔からあったようだ。今では探偵小説の古典になってしまったシャーロック・ホームズの時代にすでに、作者がもうシリーズを打ち切りたくなっても、すっかり「はまって」しまった読者がそれを許さないという現象があったと聞いている。》という箇所が冒頭にありました。連載小説、テレビの連続ドラマなどシリーズ物に「はまる」という現象をめぐるエッセイであります。
 多和田葉子さんの「物語は続く」によると、一作目の『地球にちりばめられて』につづき、今回の新刊の『星に仄めかされて』はシリーズの二作目になるようですね。

 

地球にちりばめられて

地球にちりばめられて

 

 

 

星に仄めかされて

星に仄めかされて

 

 

十薬の花に涼むや楽屋裏

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 ドクダミの白い十字形が目立つ季節になりました。葉を千切ると独特の匂いがします。この時期は繁茂した姿を見ることができます。

 ドクダミ科の多年草。日陰の湿地に生え、高さ一五~三五センチ。全体に悪臭がある。葉は広卵形。夏、淡黄色の小花を穂状につけ、その基部に白い苞(ほう)が十字形につき、花びらのように見える。整腸・解毒・利尿などの民間薬として用いる。十薬(じゅうやく)。  『大辞泉

 

 「十薬の花に涼むや楽屋裏」 

 昭和十三年(1938年)の松本たかしの俳句です。

 

 久しぶりに書店へ。2020年11出版社共同復刊24の「書物復権」という小冊子を入手しました。復刊リクエスト本を元に決定した書籍は五月下旬より全国約200の協力書店店頭にて展示される予定という。小冊子に「書物と食物」という藤原辰史氏の文が掲載されていて、書物と食物の味わいをめぐって論じている。
 箱入りの本、薄めの文庫本、ドストエフスキーフーコードゥルーズ丸山眞男夏目漱石藤田省三の本などの味わいを食物の比喩で語っています。
 ドストエフスキーは、《札幌ラーメンの濃厚な味噌とコーンとバターの味がするし、フーコークリーミーなフレンチのコースにデザートを食べた満腹感に襲われ、ドゥルーズはカラフルで新鮮で多種類の野菜のサラダの茎が喉に刺さるし、丸山眞男は、洋食屋でナイフとフォークでエビフライとハンバーグを食べたような気持ちになり、夏目漱石藤田省三はざるそばを啜ったあとの喉越しが残る。》

 

www.kinokuniya.co.jp

「秘密の本棚」を聴く

 夜のNHKラジオの番組で、「高橋源一郎飛ぶ教室」を聴く。前半の「秘密の本棚」で紹介された一冊は、ヴァージニア・ ウルフの『自分ひとりの部屋』。女性が小説を書くのに必要なのは、知的自由をささえるためには、自分ひとりの部屋と年収500ポンドが必要だとヴァージニア・ ウルフはいう。この本の書かれた時代背景やウルフの生涯と作品をめぐり語られる。

  

自分ひとりの部屋 (平凡社ライブラリー)