書店の平台にリチャード・ブローティガンの『アメリカの鱒釣り』の文庫本を見つけた。手にとって『アメリカの鱒釣り』の表紙を眺める。
版元は新潮社からである。
表紙の写真は1975年初版の晶文社発行の『アメリカの鱒釣り』と同じ写真だった。
タイトルの文字の位置が変わっているだけで、ほぼ同じような装丁だけれど、晶文社版のように裏表紙にも表(おもて)表紙と同じ写真が装丁されている訳ではない。
そこら辺が、文庫というものの制約だろう。
青木日出夫訳のブローティガンの『愛のゆくえ』は、1975年に新潮文庫で出版されているので、これで新潮社からの文庫化は2冊目になるんだなあ。
この文庫でうれしいのは、訳者の藤本和子さんの「文庫版へのあとがき」が読めることである。
この9月に藤本和子訳で、ブローティガンのAn Unfortunate Woman : A Journey と題された作品が出版されることになっているそうだ。
1984年の秋10月、ブローティガンが亡くなったのをニュースで知った日。その夜、小さな開店したばかりの書店へ寄り道して、奥に3人が座れば満席になるようなカウンターのあるカフェで、コーヒーを注文して静かにブローティガンの死を考えていたのを思い出す。