月と結城昌治の『死もまた愉し』

 きのうは一羽のアオサギが頭の上のそばを悠々と飛び越えて、グライダーのように飛び去って行ったのだった。もう鳥には出会わないだろうと思っていたら、またまた橋の上で鳥がバタバタと上下につばさを動かしながらやって来た。正面から、近づいて来る一羽の黒い鳥はカラスだった。アオサギの時よりやや高い所を飛んでいて、だんだん近づき、やがて頭の上を通り越して、背後の方へバタバタとつばさを動かしながら去って行った。川の上という所は、鳥にとっても道のようなものなのかもしれない。
 夕方、5時半ごろ東の空に月が上がっていた。高度は四〇度くらい。満月に見える。南西の空に低く高度一〇度くらいで、宵の明星の金星が大きく明るく輝いていた。
 6時半ごろ東の空を観ると、月の右側に火星が並ぶように光っていた。大接近の頃と比べるとやや小さくなっている。
 結城昌治の『死もまた愉し』(講談社文庫)で、いいなと思った俳句。

 まじまじと犬に見られて秋の暮
 木の葉降る音聞く一夜一夜かな
 指させば満月かかる指の先
     「余色」より

 夜半の午前1時、もう日付は16日になるが、ふと目覚めて外が明るいので窓を開けると、月と火星が南の空に高く上がって、明るく輝いている。
 蕪村の句、「月天心貧しき町を通りけり」かな。
 結城昌治の『死もまた愉し』の文庫版の解説を常盤新平が書いている。この文章が読ませる。それと、結城昌治の延べ十時間にわたって語り下ろされた「死もまた愉し」の話もいいなあ。