伊藤逸平の雑誌「VAN」

クスノキの花

 五月晴れである。強い風に街路樹のクスノキの葉が揺れていた。柔らかそうな若葉に、クスノキの花が咲いている。小さくて目立たないが、そばでじっくり眺めると花びらが六枚ある。大きさは六ミリほどかな。花は白いが、黄緑色から白くなりかけている花もある。柔らかい葉を一枚とって、指ですりつぶすと淡い樟脳(しょうのう)の香りがした。
 「中央公論」2006年4月号で、川本三郎の新連載「『細雪』とその時代」を読む。本社創業一二〇周年記念新連載とある。第一回は〈女が育てた阪神間文化〉というタイトルで、『細雪』の舞台の「阪急沿線の芦屋」をめぐって書いている。うーむ。面白い連載になりそうだ。
 長薗安浩の「遺書、拝読」第二十八回は、加藤芳郎の『あくせく自適で行くんだ、オレは!』(講談社)であった。その加藤芳郎の本に、『加藤芳郎の仕事も人生もプロでなくちゃ』1994年(中経出版)がある。先月(四月)、古本市場という新古書店で買った。自伝的な聞き書きによる本である。読むと、伊藤逸平に触れた箇所があった。「VAN」の発行者だった伊藤逸平について書かれた本は、いままで見たことがなかった。この加藤芳郎の語っている話は、伊藤逸平の雑誌「VAN」を知る手がかりになるなぁ。