鵯(ひよどり)のこぼし去りぬる実の赤き

ナツメの実

 川を渡っていると、一羽のアオサギが右から左へ横切って飛んで行く。前方二十メートルの上空を五メートルの高さで、ゆっくり、次第に加速させながら飛び去って行った。浅瀬には仲間のアオサギが、散開して二羽ほど見かけられた。
 街路樹のナツメの木のそばを通り過ぎるときに、樹の周辺にナツメの実が散らばっていた。先日の台風で落下した実は、暗赤色から黒色になってあちこちに転がっている。草むらの中に、まだ赤い実がゴロンと落下して横たわっていた。鳥がついばんだのかな。

鵯(ひよどり)のこぼし去りぬる実の赤き

 『蕪村遺稿』の句である。