ユル・ブリンナー氏とカエル

背が緑になりかけた蛙

 通りにネムノキがあり、満開になっている。背の高い木で、枝も伸びて繁茂している。蒸し暑いが、風が強く吹いて来る。
 久しぶりに公園の池に寄り道した。
 近づくと何人もの人が池をのぞきこんでいる。ハスの葉が急に立ち上がっていたり、水面をじっと目を凝らして見つめる人、ほらほらと池にいる蛙を指して観察する人と、にぎやかである。
 デジカメのシャッターを押してくださいと頭がユル・ブリンナー氏に似た男に頼まれる。池を背にしてシャッターを押してあげる。
 カナダのトロントから来たと言う。カナダ人かと問えば、ロシア人だという。十年前からトロントに住んでいるキエフ生まれのロシア人と一緒に池の蛙を眺めた。うーむ。地球は狭い。
 眠る前に、『波』2007年6月号で、日高敏隆「猫の目草」(ねこのめぐさ)第137回「カエルたち」を読んだ。カエルをめぐるエッセイである。

 田んぼでにぎやかに鳴いているカエルたちの大部分は、ニホンアマガエルというカエルだった。田んぼで鳴く何百匹というカエルの声を聞きながら家へ歩いていく途中、ぼくはほんとうに幸せな気持ちだった。  62頁