梅咲ぬどれがむめやらうめじややら

白梅

 二十四節気のひとつ啓蟄(けいちつ)が、今年は三月五日だった。白梅が見頃で、周辺は良い香りに包まれている。春が一足一足と近づいて来ている。
 蕪村の明和八年(1771年)の句に、「風鳥(ふうてう)のくらひこぼしや梅のかぜ」。
 もう一句、「梅咲(さき)ぬどれがむめやらうめじややら」。この句は、安永五年(1776年)の句である。
 「あらむつかしの仮名遣ひやな。」の前書きがあって、脚注によると《本居宣長が『字音仮字用格』にン音を「む」と書くべきことを主張し、上田秋成と論争になったことをさす。》とある。
 野尻抱影の『星空のロマンス』を読んでいると、NHKテレビの連続ドラマ「鞍馬天狗」の原作者・大仏次郎に、野尻さんが中国の清朝の出版物で星占いなど、星にまつわる本を中国から取り寄せてもらったということを書いていた。他に丸善で立ち読みしてアラビアの星の名前を記憶して、売り場から離れて持っていた小説の見返しに鉛筆でせっせと書き入れてを繰り返したエピソードがあった。こんな立ち読みを毎回やられては丸善も迷惑だろうが、と苦笑まじりに。(「星書乱抽」より)
 坪内祐三の『アメリカ』(扶桑社)を三分の一ほど読んだ。