路たえて香にせまり咲いばらかな

ブルームーン

 12日、夕方の南の空に上弦の月を見る。高度は高く八十度ほど。
 今日は空気が乾いた五月晴れだったが、午後四時ごろ、通り雨。夕方快晴になる。
 街路樹に桑の木があり、実が生(な)っていた。まだ色づいてはいない。
 公園の池とバラ園に寄り道する。
 池ではハスの茎が水中から伸びて来ていた。
 バラ園ではアルバートシュバイツアー、クイーンエリザベス、ブルームーン、ピカデリーが満開だ。 ブルームーンはほんのり青い。蕪村の句に、「路(みち)たえて香(か)にせまり咲(さく)いばらかな」。
 安永四年四月一二日の句である。
 
 一昨日の日曜日夜、ラジオ深夜便の「読書で豊かに」を聴こうと思っていた。
 五月のゲストは阿部日奈子さんである。どんな本が紹介されるか、期待していたのだったが、残念ながら眠ってしまった。
 それはさて置き、武藤康史の『文学鶴亀』(国書刊行会)から「国語辞典を引いて小津安二郎を読む」を読んだ。
 残念ながら先日観た小津安二郎の映画『一人息子』には触れられていなかったが、同じ昭和十一年(1936年)の映画『大学よいとこ』にふれていた。
 この映画の「煙突が映し出されたカット」から煙突男をめぐる辞典の語釈について語られている。『一人息子』でも、清掃工場のようだったが、煙突の風景が映し出されていた。
 この頃の小津は、この煙突に関心があったのかな。
 そして、昭和十一年から九年後には東京は焼野原になり、敗戦になる。
 小津安二郎は昭和十八年にシンガポールへ渡る。