『角川必携国語辞典』

ハス

 花が散り、ハスの花托(かたく)が膨らむ。緑から灰色がかって来た。ハスの花托の形は如雨露(じょうろ)に似ている。

 草花や植木などに水をかける道具。じょろ。▽「如雨露」は当て字。  『角川必携国語辞典』

 15日、朝日新聞国語学者大野晋さん死去のニュースを知る。
 「日本人の言語運用を支えた」と井上ひさしさんが「大野晋さんを悼む」文を寄せている。
 それによると、『広辞苑』で大野さんが書かれた普通の大和言葉の語釈が素晴らしかったこと、『岩波古語辞典』と『角川必携国語辞典』を共同編集されたことをあげていた。
 《共同編集された『岩波古語辞典』は今も毎日、五、六回は引きます。角川書店刊の『角川必携国語辞典』も、「うとうと」と「うつらうつら」の違いなど日本語の機微を教えてくれます。とにかく、大野さんは私たち日本人の言語運用の支えでした。》
 なるほど。このうち、『角川必携国語辞典』は愛用している辞典なのだった。たしかに語釈が素晴らしい。
 たとえば、「続き柄」(つづきがら)という言葉がある。
 『角川必携国語辞典』では、《親族や家族としての関係。ふつう、世帯主を基準として、「祖父」とか、「長女」とかいう。続柄(ぞくがら)。▽本来は「ぞくがら」というのは正しくない。》
 もうひとつ、「甥」(おい)の語釈は《その人の兄弟・姉妹の生んだ男子。⇔姪(めい)▽甥・姪と呼ばれる人から見て、親の兄弟は「おじ」、姉妹は「おば」。》
 それと、コラム「つかいわけ」がことばの微妙な違いを解説している。日本語のもつこまやかさ豊かな表現方法をつかんでくださいと。「この辞書を効果的に使うために」。