人は何に化けるかもしらじ秋のくれ

スイレン

 昨日の夕方、公園の池に寄る。ハスの葉がすっかり枯れていた。
 静かな水面から顔を出しているスイレンのつぼみの色が目に映った。
他には池の周辺に小さな蟹が這っているのが見えるのみである。
 蕪村の句に、「人は何(なに)に化(ばけ)けるかもしらじ秋のくれ」。
安永六年七月二十日の句である。
 そうこうしていると、ドイツのミュンヘンからの二人の旅行者がやって来た。城へ行きたいというので同行することになる。理由はなにもない。途中から暗くなりはじめる。
 途中神社に寄って、天守閣前に着くころにはとっぷり日が暮れた。
 神社では御神籤(おみくじ)と絵馬と礼拝の仕方を聞かれた。
 城を仰ぎ見ていると暗闇から女の人がやって来た。天守閣の最上階の建物部分がお寺に似てますね。と、仰向いて女の人が突然に言うのだった。ビジネスでやって来て仕事が終わったので城を見に来たものらしかった。「人は何に化けるかもしらじ秋のくれ」。
 ブックオフで『内田百間集成17 うつつにぞ見る』(ちくま文庫)を購入。解説は佐野洋子。解説が面白い。
 眠る前に池澤夏樹の『セーヌの川辺』(集英社)から、巻末の「セーヌ川を船で行く――あるいは内水面の文化史」を読んだ。

 セーヌ川英仏海峡に注いでいるから、北の海から地中海までずっと船で内水面を経由して行けるのだ。更に、マルセイユの手前でミディ運河に入って西に進むとボルドーに行き着く。大西洋に出られる。  286ページ