映画「しとやかな獣」

 映像文化ライブラリーで「名作映画 川島雄三監督特集」から「しとやかな獣」(1962年、大映、96分、カラー)を観る。ブラック・ユーモアぶりに引き込まれる。
 元軍人という父親(伊藤雄之助)とその妻(山岡久乃)、息子、娘の四人家族の悪党ぶりと、その悪党を騙す若尾文子の演じる芸能プロダクションの会計係をやっている女との騙し合い合戦が見どころである。そのやり取りがこれでもかといった展開で、驚きあきれるほどだった。
 税務署員の男(船越英二)が会計係の女の術にはまって抜き差しならぬ立場に追い込まれ、四人の家族のいる団地のアパートにやって来る結末の雨の情景は余韻を残して印象的だ。
 伊藤雄之助の一家四人と、芸能プロダクションの社長(高松英郎)、そして若尾文子の平静さを装った悪党ぶりが見どころだ。