バートランド・ラッセルの「怠惰への讃歌」

 8月の平凡社の新刊でバートランド・ラッセルの『怠惰への讃歌』が復刊されるようだ。
 平凡社ライブラリー676になる予定で、翻訳者が柿村峻、堀秀彦となっている。
 ということは、角川文庫の『怠惰への讃歌』がそのまま復刊されるということだろう。
 今回のバートランド・ラッセルの『怠惰への讃歌』の復刊は喜ばしい。

 角川文庫の『怠惰への讃歌』の目次は以下のようになっている。

  序

 第一章 怠惰への讃歌
 第二章 「無用」の知識
 第三章 建築と社会問題
 第四章 現代版マイダス王
 第五章 ファシズム由来
 第六章 前門の虎、後門の狼
 第七章 社会主義の問題
 第八章 西欧文明
 第九章 青年の冷笑
 第十章 一本調子の現代
 第十一章 人間対昆虫
 第十二章 教育と訓練
 第十三章 克己心と健全な精神
 第十四章 彗星について
 第十五章 霊魂とは何であるか

 解説、「ラッセルの魅力」は堀秀彦氏によるもので、それによると、《この翻訳は柿村峻氏の手になるものだ。この本は時間的にはもうかなり前のものだ。ところどころにその意味で、古い歴史的事情が引き合いに出されている。けれども、一貫して流れている批判の眼、先見の鋭さ、それは古いどころか、いまも尚ま新しい。一人でも多くよんでほしいと思う。
 怠惰をたたえるのは、英国の場合、なにもラッセルには限らない。十九、二十世紀のイギリス人のエッセイをよむと、こういうテーマはいくつも出てくる。例えば「なんにもしないことについて」(On Doing Nothing)といった題で。だが、それらの「無為」をたたえる東洋風なエッセイとラッセルのそれとのちがいはやはり、ラッセルの書き方、考え方の論理的性格にあるように思われる。そういう点で、ラッセルの持ち味は、まったく独自のものなのだろう。
》 210ページ
  第一章の「怠惰への讃歌」は執筆されたのが、1932年。今読んでも堀秀彦氏も言うように、読むたびに文字通り面白いと思う。