役に立たないこと

カンナの花

 通りにあるカンナが、強い日差しに映えるように鮮やかである。
 夜半、東の空に木星が昇って来ている。晴れているので観望に最適だ。

 カンナ科の多年草。高さ一〜二メートル。葉は広楕円形で、下部は鞘(さや)になる。夏から秋にかけて紅・黄・白色などの大きい花を総状につける。中南米の原産で、ヨーロッパで改良され、日本には明治末に渡来。花カンナ。  『大辞泉

 大辞泉の引用句は、「女の唇十も集めてカンナの花 」、山口青邨の句である。
 『波』2009年8月号で、雑誌「考える人」編集部の「ほんとうに大事な、役に立たないこと」という文に注目した。「考える人」2009年夏号での池内了さんと中村桂子さんの対談にふれて、次のように。

 文学と科学は隣どうしのご近所だ。
 しばらく前から、何となくそう思うようになりました。(中略)

 池内「学問というかたちではないけれど、江戸時代には朝顔や鶏や鯉などの多様な種類がつくり出されました。市井のなかに博物学的な発想があった。僕はあれは博物学の実践といっていいように思います。」
 中村「博物学は英語でナチュラルヒストリーですね。自然の流れと見るわけでしょう。さきほど芸術と理論は同じであるとおっしゃったけれども、自然と向き合うという意味で、博物学と芸術は同じところがあるのではないでしょうか。(中略)」
 そして、文学と科学は似ているとますます思ったのは、池内さんのこんな発言。
「日本では科学は技術をくっつけて、『科学技術』という語にしてしまって、すぐに役に立つものみたいに思われている。科学は文化なのだから、無用の用、役に立たないと思ったほうがいいんです」
 そこからしか始まらない、ほんとうに大事なことがあります。 63ページ