「新・話の泉」で森繁を聴く

「出版ダイジェスト・白水社の本棚」が届く。「愛書狂」というコラムに、《無人島へ持っていく一冊というアンケートがあるなら、棺に収める一冊という問いかけがあってもいい。》
 例として、篠田一士が『樹樹皆秋色』のなかで書いているのが吉田健一は読みさしの『イーヴリン・ウォー伝』、石川淳荘子、ミショー、ヴェルレーヌの三冊が収められたそうだ。この手のアンケートは興味深いものだ。
 筆者は《さて、私はどんな本を棺に入れるか。もちろんそれは内緒である。》

 夜、NHKラジオの「新・話の泉」を途中から聴けた。
 ちょうど小津安二郎の細かい演出の挿話を出演者が話しているところからだった。
 こだわりという言葉が似合う人だったんですね。
 司会がこれは森繁久弥さんの追悼の番組なんです。と、元へ話を戻すところだった。小津から森繁へ。
 昭和32年のNHKの「日曜名作座」は加藤道子さんと森繁さんとで始まった。
 幸い好評だったので、延々50年つづくことになった番組の第一回『人生劇場』が、「新・話の泉」で放送される。
 一人三役を朗読で演じ分けている。今聴いても文句なく上手いなぁ。
 
 「灯台守」、「銀座の雀」、森繁さんの歌を聴きながら、その芸を偲ぶ。
 立川談志さんが森繁さんに最後に会ったときの話を、しんみり語る。
 「たまには寄席へ出て十日間くらい話してくれればいいんだと思うんです。森繁、さようなら。」
 「知床旅情」の歌が流れ、いい知床旅情でした。森繁さんが伝えようとしたもの、そのこころを受けついでいきたいですよね。と、渡邊あゆみアナウンサーが付け加える。
 それから、「とんち大学」の川柳の選評があった。
 「雪とは、地球の基礎化粧品」
 「雪とは、遠くにあって思うもの、近くにあって重いもの」

 「新・とんち教室」は、もし三日休みがあると何をしますか? という問題に聴取者の答えが紹介される。 
 「一日目地獄に行く。二日目極楽に行く。三日目戻って来る。」

 今月の問題は、今の時代をあらわす四字熟語をハガキでお送りください。
 家元の言葉で締めくくられて終わる。蛇の小噺(こばなし)で。
 また来月お会いしましょう。
 出演は山藤章二嵐山光三郎毒蝮三太夫松尾貴史の四氏と録音で参加の立川談志さんだった。