『言い残しておくこと』

白梅と月

 快晴で暖かい。遠くの方は春霞(はるがすみ)のように霞んでいる。
 通りすがりの畑に白梅が何本も咲いていた。夕方、公園に白梅が咲いているので、近くに寄って見た。白梅の白い花から良い香りがする。仰向いて高いところの白梅を眺めると白い半月が天頂近くにあった。
 蕪村の句に「白梅(しらうめ)やわすれ花にも似たる哉」。 
ほびっと 戦争をとめた喫茶店-ベ平連1970-1975 in イワクニ    言い残しておくこと

北米体験再考 (岩波新書 青版 F-99)

北米体験再考 (岩波新書 青版 F-99)

 先日、中川六平著『ほびっと 戦争をとめた喫茶店 ベ平連1970―1975in イワクニ』(講談社)を読んだ時に、鶴見俊輔著『北米体験再考』を久しぶりに手にして読んだ。(『日米交換船』以来)
 中川六平氏の当時の日記などを読むと、この『北米体験再考』を再び読むことになる。
 それから、しばらくして鶴見俊輔著『言い残しておくこと』(作品社)をたまたま手にしたのだった。
 それで、少しずつ読んだ。著者へのインタビューもので、興味深いエピソードが語られていて、ああそうだったのかという長年の疑問が解ける箇所がある。
 インタビューの内容は雑誌『すばる』2008年6月号〜8月号に初出である。
 収録された時期は2007年11月21日(京大会館)、2008年1月29日(山の上ホテル)におこなったインタビューをまとめたものである。
 
 目次には「第一部 “I AM WRONG”」、「第二部 まちがい主義の効用」、「第三部 原爆から始める戦後史」とあり、どこから読んでもいい。以下、目次を引用しておきます。
 第一部には六つの見出しがある。(注:数字はページ)
 第二部には七つの見出しがある。
 第三部には七つの見出しがある。

 第一部 “I AM WRONG”
 私にとって、おふくろはスターリンなんです 11
 『共同研究 転向論』は、私のおやじに対する答えなんだ 33
 もう一つの物差し――後藤新平 68
 江戸と明治、二つの世を生きた「エリート」たち 78
 つくる人とつくられた人 86
 張作霖、鬼熊、阿部定 98
 
 
 第二部 まちがい主義の効用
 「まちがい主義」のべ平連 119
 東大から小田実のような人間が出たのは奇跡だ 134
 『世界文化』と『思想の科学』をつなぐ糸 148
 『死霊』をどう読むか 174
 花田清輝に叩かれて開眼する 187
 桑原武夫、あるいは勲章のこと 195
 埴谷雄高の見事な所作と丸山眞男の思想史的つぶやき 207

 
 第三部 原爆から始める戦後史
 執拗低音としての敗戦のラジオ放送 217
 映画『二重被爆』が語る原爆の意味 239
 科学者はみなハイド氏になった 252
 丸山眞男被爆体験 257
 「無教育の日本人」の知性の力 266
 “誤れる客観主義”からいかに逃れるか 272
 私は人を殺した。人を殺すことはよくない 283

 
 第三部には『北米体験再考』で触れることを避けていた問題が語られている。海軍での体験のことで。
 それと、原爆の人類史的な意味をめぐる考察が興味深い。

 「あとがきにかえて」で、この本では触れていない問題をここで付け加えておきたいとして、漫画『サザエさん』を描いた長谷川町子が姉妹で自分たちの出版社「姉妹社」を作り、自分たちの手で作品を送り出していく。そこにアメリカから輸入されたウィメンズ・リブとはちがった日本自前のフェミニズムがあると考察している。

 本書のタイトルが「言い残しておくこと」とあるが、今までに書いた本からの引用文が参考になる。