映画『猫と庄造と二人のをんな』

猫と庄造と二人のをんな

 曇りのち小雨。春の雨である。
 蕪村の句に、「はるさめや暮(くれ)なんとしてけふも有(あり)」。
 「森繁久彌特集」が開催されている。豊田四郎監督の映画『猫と庄造と二人のをんな』(1956年、東京映画、104分、白黒)を観た。小雨のためか観客は少ない。
 リリー(猫)と庄造(森繁久彌)、妻の品子(山田五十鈴)と庄造の母おりん(浪花千栄子)、後妻の福子(香川京子)の葛藤を描いた辛口の喜劇。忘れられないシーンがいくつかある。
 海水浴の砂浜で庄造が冷たい飲み物の滴を腹ばいになって寝そべっている福子に垂らしてやろうとして、何人もの寝そべっている娘たちに一人ひとり垂らして行くシーン。浪花千栄子が鶏小屋に隠れるシーンなど。
 ラストで品子と福子の二人が凄まじい取っ組み合いになり、呆れた庄造が猫を探して海辺へ雨の中を向かう。
 唯一猫のリリーのみが庄造にとって救いになっているのだった。いやはや。猫好きには堪らない映画かも。
 原作は谷崎潤一郎。脇役に都家かつ江横山エンタツ(骨董屋の店主)。
 谷崎潤一郎の原作を八住利雄が脚色、音楽は芥川也寸志
 豊田四郎監督の『夫婦善哉』の翌年の作品である。