回顧の人、山田稔の原点

 青空を背にしてハクモクレン(白木蓮)のつぼみが膨らんでいる。

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 先日、図書館で図書新聞を見た。1月11日号(3430号)である。
 「トークイベント 山田稔著『門司の幼少時代』(ぽかん編集室)をめぐって」というタイトルで一面から三面まで掲載されていた。京都の恵文社一乗寺店COTTAGEで山田稔氏と聞き手の服部滋氏と澤村潤一郎氏が出席したトークイベントの模様を伝える記事である。

 回顧の人、山田稔の原点

 一部引用すると、

山田 (前略)『門司の幼少時代』を出来上がってから読み返してみると「ああ、ここには現在のわたしが全部入っている」と痛感しました。ただ、そのとき「スカトロジア」というのは頭にありませんでしたが(笑)。
服部 詩人の平出さんが門司生まれで、小倉高校の出身ですね。平出さんの書かれる門司は自分の門司とは違う、と仰ったとうかがいましたが、どのようなところでしょうか。


いまも存在しつづける少年の姿

服部 門司についてモダニズムとか、ハイカラな都市だったという話が出ましたが、港町で育った作家にはある種の共通点があるのではないかと思っています。函館生まれの長谷川四郎さんの、乾いた文章や一種のコスモポリタニズムみたいなところは港町の気風と関係しているのではないでしょうか。

 

 山田稔著『何も起こらない小説』(編集グループSURE)で語られた話と重なるところもありますが、聞き手の服部滋氏と澤村潤一郎氏の質問によって語られた話(回顧談)がとても興味深かった。それと、門司生まれの平出隆さんについて服部滋氏が触れておられた。昨年の夏に『猫の客』という小説を読んだことがあったのでとても親しみを感じた。

 《そのとき「スカトロジア」というのは頭にありませんでしたが(笑)。》とあるのは、『スカトロジア』(福武文庫)のことですね。解説が小沢信男さん。