猫の三味線

ナズナ

 季節はずれの寒風のなかを、道端にナズナの白い花が咲いている。小さくて目立たないが、近寄って眺めるとなるほどと思う形をしていた。

アブラナ科の越年草。道端などに生え、高さ一〇〜四〇センチ。葉は羽状に裂けている。春、白い小さな四弁花を総状につけ、三味線の撥(ばち)のような形の実を結ぶ。春の七草一つで、若葉は食用。三味線草。ぺんぺん草。  『大辞泉

 松山巖著『ちょっと怠けるヒント』が幻戯書房から出ている。「雑こそ奥が深い」というエッセイに、柳田國男の『野草雑記』にふれて、《ナズナはペンペン草と呼ばれる。三味線の撥(ばち)と三角形の草の形が似ているからで、「猫の三味線」とはじつにあいらしい。実物の三味線の撥より草が小さいからだろうが、よくこんな面白い発想をすると感心する。》(176ページ)
ちょっと怠けるヒント