志村三代子著『映画人・菊池寛』を読む

ソメイヨシノの紅葉

 22日は、二十四節気のひとつ小雪であった。最高気温16℃、最低気温5℃。
 青空が広がり小春日和である。街路樹の周辺が鮮やかに紅葉や黄葉で敷き詰められていた。
 

 11月の新刊に、織田作之助著『わが町・青春の逆説』が岩波文庫で刊行された。
 「わが町」は、川島雄三監督により映画『わが町』(1956年、日活、98分、白黒)として映画化されている。
 川島雄三監督といえば、映画『しとやかな獣』がある。脚本が新藤兼人で、伊藤雄之助をはじめ登場人物の悪党ぶりがすごい。
 ラストの若尾文子の痛烈な悪党ぶりが印象的なブラックコメディーである。
 その若尾文子へのインタビュー本、四方田犬彦斉藤綾子編著『映画女優 若尾文子』(みすず書房)に志村三代子・作成の「若尾文子フィルモグラフィー」が収録されている。
 若尾文子の出演した映画のタイトル・映画会社名・封切日・原作・脚本・監督・撮影・出演・役名(役柄)・モノクロorカラー・上映時間・解説で59ページもある労作です。

 今年の8月の新刊で、志村三代子著『映画人・菊池寛』(藤原書店)を読むと、第五章の注に、織田作之助の小説『青春の逆説』をめぐって次のような記述がありました。
 

(47) 志賀暁子のスキャンダルにインスピレーションを得た小説に、織田作之助の最初の長編小説『青春の逆説』(一九四一年)がある。この作品は、二部構成だが、『青春の逆説』で、主人公の毛利豹一が恋する元映画女優村口多鶴子は志賀暁子がモデルとされている。 『映画人・菊池寛』175ページ

 この注は藤沢桓夫織田作之助の人と作品」『織田作之助全集 二』講談社、一九七〇年、三七七頁を元にしています。

 余談ですが、第五章 映画女優とスキャンダル――『美しき鷹』(1937年)によると、菊池寛の小説の映画化に、日活(千葉泰樹・監督、轟夕起子・主演)とPCL(山本嘉次郎・監督、霧立のぼる・主演)と新興キネマ(田中重雄・監督、志賀暁子・主演)の三社によって一〇月一日に同時公開されたという。

 参照:「青春の逆説」http://www.aozora.gr.jp/cards/000040/files/732_19841.html

映画人・菊池寛

映画人・菊池寛