チェコ・アニメと「1968年文化論」

プログラム

 7日、「アート・アニメーション特集」が映像文化ライブラリーで始まる。
 今年初めて観る映画はアニメーション映画で、ルネ・ラルー監督『ファンタスティック・プラネット』(1973年、フランス、チェコスロバキア、72分、カラー)を観た。夜の部で観客は15人ほど。 
 8日、ヤン・シュヴァンクマイエル監督の『アリス』(1988年、スイス、西ドイツ、イギリス、84分、カラー)を観る。昼の部で観客は50人ほど。

 プログラムによると、
 ファンタスティック・プラネット
フランスの代表的SF作家ステファン・ウルの小説『オム族がいっぱい』を原作とする長編アニメーション映画。巨大生物に支配され、人間が虫けらのように扱われている惑星での出来事を幻想的な映像で描く。カンヌ国際映画祭で、アニメーションとして初めて審査員特別賞を受賞。 
『アリス』
ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』を、チェコのアニメーション作家シュヴァンクマイエルが独自の世界観で脚色、映像化した作品。子供向けのファンタジーとは異なり、ダークで陰気な雰囲気が全編を通して漂う。アヌシー映画祭最優秀長編アニメーション映画賞を受賞。
 暗闇の中、スクリーンのルネ・ラルーの『ファンタスティック・プラネット』のフランス語のクレジットを見ていると、脚本にローラン・トポールの名前があった。
 ローラン・トポールといえば、徳野雅仁の作品を思い出す。
 ヤン・シュヴァンクマイエルの『アリス』は実写とアニメーションを組み合わせた作品である。

 『アリス』の上映が終わった後、観客から「怖かった!」という声が聞こえて来た。
 それを聞いて苦笑いをする。
 シュヴァンクマイエルが子供向けのファンタジー作品を作るわけはないでしょう。
 暮れに読んだ四方田犬彦・平沢剛・編著『1968年文化論』(毎日新聞社)で、四方田氏がヤン・シュヴァンクマイエルの1968年のアニメーションと、長谷邦夫のパロデイ漫画に触れていた。(この二人に触れていたのに注目する。)
 『1968年文化論』でのシュヴァンクマイエルの作品といえば、『庭園』(1968年、16分、白黒)と、『家での静かな一週間』(1969年、20分、カラー・白黒)の二作品を四方田氏は念頭に置いているに違いない。
 『庭園』と『家での静かな一週間』は、1968年の「プラハの春」に対してのシュヴァンクマイエルの痛烈な皮肉と風刺の込められた傑作である。
 『アリス』以前に、シュヴァンクマイエルに『ドン・ファン』(1970年、32分、カラー)という作品があるが、作風がそっくり。これも観客から「怖かった!」という声が聞こえて来る作品といえるかな。

1968年文化論

1968年文化論