映画『お早よう』

8月プログラム

 映像文化ライブラリーで小津安二郎監督の『お早よう』(1959年、松竹、94分、カラー)を観た。滑稽味のある映画である。
 館内からクスクス笑いが聞こえて来た。
 新興住宅地を舞台に、そこに住む家族の付き合い、町内会の会費をめぐるいざこざ、押し売り(殿山泰司)の訪問などのシーンがある。
 中学生と小学生が通学する土手の上で、おならを出す妙な遊びが流行っている。ぷー。
 テレビを見るために他所の家へ見に行くのが普通だった時期の映画である。
 林家の子供の男の子二人はテレビを買ってくれないといって、父親・林啓太郎(笠智衆)に駄々をこね、大人の挨拶の言葉「こんにちは、お早よう。いいお天気ですね。」といった言葉には意味がないと沈黙のストライキをするようになる。近所の母親たちの戸惑いが描かれる。
 お隣の定年で会社勤めをやめたサラリーマン(東野英治郎)と笠智衆が飲み屋でしんみり語るシーンも。
 その東野英治郎が再就職して家電販売に就いたことから、その縁でテレビを笠智衆が買い、家にテレビが届くのだった。いままで沈黙のストを続けていた子供らは大喜び。
 笠智衆の妻の民子を三宅邦子が、同居している民子の妹の節子を久我美子が演じている。
 子供らが英語を習いに行っているのは、節子の学生時代の知り合いの福井加代子(沢村貞子)の弟の平一郎(佐田啓二)で、節子と平一郎は惹かれあっているが、本音が言えなくて駅で会ったときに「こんにちは、お早よう。いいお天気ですね。」といった挨拶を交わすのだった。
 画面の色使いも凝っている。とても面白い映画である。
 杉村春子長岡輝子大泉滉らが脇役で好演。