フレデリック・ワイズマンの『病院』

病院

シネマテーク・プロジェクト第4弾「フレデリック・ワイズマンのすべて」が22日から映像文化ライブラリーで始まった。今回は2月から2ヵ月にわたり15作品を一挙上映の予定。

 24日、『病院』(1969年、84分、白黒)を観に寄った。観客は30人ほど。

 プログラムに、
 ニューヨーク市ハーレムにある大きな都市病院メトロポリタン病院の活動を、主に緊急棟と外来患者診察所での医師と患者のやりとりに焦点を当てて撮影した作品。都市病院に運びこまれる様々な患者とその処置をする職員の姿を通して、都市が抱える多くの問題が浮かび上がる。
 2009年の10月の「フレデリック・ワイズマン特集」以来である。
 このときは、『チチカット・フォーリーズ』(Titicut Follies)(1967)と『エッセネ派』(Essene)(1972年)を観ている。
 これは、マサチューセッツ州の州立刑務所マサチューセッツ矯正院とベネディクト会の修道院の日常を追ったドキュメンタリー映画で独特の味わいがあった。

 『病院』では病院という施設・組織で、医師と患者のやりとり、さまざまな出来事に懸命に取り組む病院を取り巻く人々の日常を患者のメンタルヘルスの問答など深刻であるけれどもなんだか滑稽な問答もあったりとを撮影している。プライバシーに踏み込んだ会話がつづくけれども、登場する患者や医師などが撮影のカメラを意識しないで撮られているのが驚きだった。
 その辺は、ワイズマン流の編集術によるものなのか。
 患者の手術の様子を接写で撮っているのだが、狭いところもよく撮っている。
 メスカリンだったか、薬物を飲んでの救急患者の青年から吐き出させるシーンがある。
 その顛末を撮影しているが、よくこんな一瞬を撮影しているなと、驚いた。

 今回は2月から2ヵ月にわたり15作品を一挙上映の予定だったが、来月(3月)に『最後の手紙』(2002年)と『コメディ・フランセーズ 演じられた愛』(1996年)の2作品が追加上映決定。
 このうち、『最後の手紙』(2002年)は、ワシーリー・グロスマンの小説『人生と運命』の一章を映画化している。