『映画と谷崎』(青蛙房)を読む


 先日、タンポポの黄色い花や綿毛が沢山見られた。
 近寄って観察する。タンポポの繊細な綿毛がびっしりと密集していた。 
 

キク科タンポポ属の多年草の総称。野原や道端に生え、根際から羽状に深く裂けた葉を放射状に出す。三、四月ごろ、花茎を伸ばし、頂に黄色または白色の舌状花のみからなる頭状花を開く。種子は上部に白い毛をつけて風に飛ぶ。葉を食用とし、根などを漢方で催乳に用いる。日本ではカントウタンポポカンサイタンポポエゾタンポポシロバナタンポポなどが自生し、セイヨウタンポポ帰化している。蒲公英(ほこうえい)。  『大辞泉

 『大辞泉』の引用句は、「蒲公英(たんぽぽ)のかたさや海の日も一輪」(中村草田男)。
 道端のタンポポに触ると柔らかくはない。海を照らす太陽がまるでタンポポの一輪の花のようだ。

 千葉伸夫著『映画と谷崎』(青蛙房)を読む。
 サイレントからトーキーへと移り行く時期に映画製作に関わった谷崎潤一郎について綿密にたどっている。
 「五 サイレントからトーキー」の中に、「『細雪』と『風と共に去りぬ』」と題して二つの映画から『細雪』論を展開している箇所があり、大変興味深かった。

 『細雪』は、小説のレヴェルにおいて『風と共に去りぬ』と比較するとき、女性像とその描写は措くとして、三代前の幕末から明治への江戸と大阪を起点として、『細雪』全巻を第一部とし、戦中を第二部、戦後を第三部とする構想があってよかった。
 そのことによって、『細雪』は、歴史小説として、近代から現代を同時代にとらえ、壮大な成果を収めたのではなかったか。  228ページ

 「あとがき」に、 

もっと谷崎さん以外の小説家の映画との関係をとりあげてもよかったかなと、終わってみて思うのだが、またいずれ機会があるかと思っている。  269ページ

映画と谷崎

映画と谷崎