安田武著『昭和 東京 私史』


 
 8日、午前、梅雨明け宣言が出た。
 街路樹のイチョウに実が生(な)っている。
 「木の枝の瓦にさはる暑さかな」、芥川龍之介の大正十一年の俳句です。


 8日よりシャレオ古本まつりが始まった。15日まで開催される。
 初日、安田武著『昭和 東京 私史』1987年(中公文庫)と藤木九三著『雪・岩・アルプス』1979年(中公文庫)をアッシュ書店の棚に見つけた。

 安田武著『昭和 東京 私史』の見返しカバーに著者紹介。
 

大正十一(一九二二)年、東京に生まれる。法政大学国文科を中退し、文筆活動に入る。思想の科学研究会会長を務めた。著書に『戦争体験』『気むずかしさのすすめ』『日本の人形芝居』『型の文化再興』など多数がある。昭和六十一年十月死去。六十三歳であった。

 裏表紙に、 

戦前昭和は遠くなり、いま昭和は過ぎゆく。特に世界経済の一大中心地となった東京の変貌はすさまじい。少年から青年へ成長してゆく自分の姿を通して、激動する時代の庶民生活を確かな眼で捉える。

 高田宏氏の解説が、この本の面白さを適確に述べている。 
 

すこし前までは、すくなくとも高度成長期のはじめごろまでは、都会育ちと田舎育ちとでは、よほど違っていた。都会の暮しと田舎の暮しとは別のものだった。そのそれぞれに良いところがあり、また、だめなところがあって、そのへんが面白いところだった。安田さんの『昭和 東京 私史』は、都会育ちの良さをたっぷり持った本である。
 (中略)
 この本はただの懐古ではない。昔なつかしの江戸もの、東京下町ものなどの本が溢れているけれども、この本はそれらの本と並べて見られてはならない。肩をいからせた言挙げはないけれども、近代日本の文化状況を「私史」を通してきちんと見せているものである。一篇一篇に、「東京」を自分の「地」として生きた人の一貫した生きかたのみごとさがあり、――そこには戦争へ向ってゆく時代も鋭く描かれながら――文化とはそもそも何であるかが描き出されている。安田さんの数多い著書のなかでも私の好きな一冊である。  289〜295ページ

 「東京言葉」の冒頭に、《おない歳の鶴見俊輔が、「小学校に入る前から、こどもの間では戦争ごっこが、さかんだった」と回想している。》(59ページ)という箇所があるので、安田武さんは鶴見俊輔さんと同じ年生まれだったのですね。

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