カレル・ゼマンの「彗星に乗って」


 10月と11月の2ヵ月にわたり開催される「カレル・ゼマン特集」からの一本。
 14日、カレル・ゼマンの『彗星に乗って』(1970年、チェコ、74分、カラー)を観る。
 DVカムによる上映作品。35ミリ・フィルムと比べると、スクリーンでの質感が違っている。
 出演は、エミル・ホーバス、マグダ・バシャリョバ、ヨセフ・ベルトベッツ。
 謎の彗星が地球に急接近し、大地震とともに、町がまるごと彗星に吸い上げられてしまう。そこは恐竜が棲む奇妙な世界だった・・・。ジュール・ヴェルヌの同名小説を原作に描いたファンタスティックな色彩トリック・フィルム。(特集パンフレットより。)

 冒頭、主人公が一枚の美女が写っている絵葉書をめぐって語るところから物語が始まり、ラスト、再び冒頭の一枚の絵葉書に戻り、主人公の若き日の冒険と美女(マグダ・バシャリョバ)との恋を追憶するのだった。
 作品の構成がカレル・ゼマンの『前世紀探検』(1955年、チェコ、93分、カラー)では、冒頭に一冊の日記を開くところからナレーションによる回想で物語が始まるのだが、『彗星に乗って』では一枚の美女の写っている絵葉書をナレーションの主人公(エミル・ホーバス)が追憶する語りで始まる。
 舞台はアフリカのアルジェリアで、駐屯しているフランス軍の中尉(エミル・ホーバス)は、任務で国境線の測量をしていて高い崖の上から誤って海へ落ちてしまう。
 ふと気がつくと助かっていた。助けてくれたのがなんとあの絵葉書の中の美女(マグダ・バシャリョバ)なのだった・・・。
 そして彗星が地球に大接近し、天変地異が起こり、街が彗星(かなり大きな小惑星といった天体)にそっくり乗り移ってしまう。
 人々が地球にいた時に、国境線をめぐる争いがあったのだが、彗星の恐竜のいる緊急事態にお互いに争いをやめたが、再び街が地球に戻ってしまうと、一時休戦の約束は破られるのだった。そんな争いへの風刺あり。
 銅版画の挿絵と実写により描いている特撮の幻想的な映像が見所である。

 カレル・ゼマンといえば、小野耕世著『世界のアニメーション作家たち』に、チェコスロバキア時代のカレル・ゼマンに会いに行ってインタビューしている。
 ジュール・ヴェルヌの小説をアニメ化した『悪魔の発明』(1958年、チェコ、82分、白黒)の制作秘話などが興味深い。
 ヤン・シュヴァンクマイエルルネ・ラルーへのインタビューも収録されている。

世界のアニメーション作家たち

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