『織田作之助の大阪』のこと

 生誕100年ということだろう。織田作之助の本やその関連本が刊行されている。
 来月(11月)の新刊に、織田作之助著『わが町・青春の逆説』が岩波文庫で刊行されるようだ。
 新刊で、オダサク倶楽部編『織田作之助の大阪』(平凡社)を手にとって見た。
 オダサクが通った本屋さんの波屋書房の写真、ブックカバー、黒門市場の写真。
 自由軒のカレー(「夫婦善哉」)、道頓堀の牡蠣船(「天衣無縫」)、主人公のカップルがデートの場所にしたところ。
 『織田作之助の大阪』(平凡社)に所収の「夜店の原理」(池内紀)が、織田作之助の死の二年前に書いた「アド・バルーン」の文体の特色を論じている。
 夜店は物語の色どりになっただけではない。織田作の小説自体が夜店の原理といったもので成立していないだろうか。「おもちゃ屋の隣りに今川焼があり、今川焼の隣りは手品の種明し」の手法であって、ひたすら加算されていく。  6ページ*1
 林忠彦の人物ポートレートの写真、太宰治坂口安吾織田作之助の三人の写真を見て、池内紀さんは織田作の写真から受ける印象を「無頼派的荒ぶれの感じを与えない。」という。
 オダサク倶楽部編の執筆者の一人が書いている。
 「実際は都会人らしいモダニストであった。」

 自由軒の近くの波屋書房を訪れたことがあるが、レジが番台風なのに驚いたことがあった。
 織田作之助が通っていた頃の面影を残しているのだろうか。

織田作之助の大阪 (コロナ・ブックス)

織田作之助の大阪 (コロナ・ブックス)

*1:引用者注、色どりは彩りの誤字か。