「本の雑誌」2014年1月号、「本の雑誌が選ぶ2013年度ベスト10」に、内掘弘『古本の時間』が選ばれている。
他に白山宣之『地上の記憶』が選ばれていた。
選評の箇所、
編B あとは『地上の記憶』。白山宣之という漫画家の遺稿集です。昨年、五十代で亡くなったんですが、大友克洋、谷口ジロー、高野文子などが追悼コメントを寄せているように、同業者から敬愛された超寡作な人。ただ一日に酒を三リットル飲んでいたらしく、亡くなった原因は癌なんですけど。
(中略)
編B でもそういうアルコール臭は微塵もない珠玉の作品集です。なにも起こらない日常を淡々と描きながら心を打つ読後感を残す。「陽子のいる風景」をはじめ、漫画が好きな人だったら必ず感じるものがあるだろう短編がぎっしり。
関川夏央著『夏目さんちの黒いネコ』の物語コラムに、「焼酎を毎日二・五リットル飲んだ男」と題して、白山宣之(しらやまのぶゆき)について書いている。
一九七五年だったと思う。偶然「跋折羅」(ばさら)というタイトルのマンガ同人誌を手にした。若い同人たちの野心と自己主張がページから匂い立つようだった。芸術家志望の青年の多くがマンガ家をめざした時代である。
その中の「写真」という短編に私は注目した。(中略)
初めて会ったのは一九七九年、当時私はマンガのスクリプトを書いていた。要するに脚本である。編集者に誰かよい絵かきはいないかと問われたとき、同人誌の記憶から白山君の名をあげた。
共作したのは『夜のクーリエ』というハードボイルドだった。「クーリエ」走る人、または伝書使だが探偵を意味させた。白山君はうまいだけではなく、生意気で頑固な青年だと知ったのはこのときだ。(中略)
彼との接触はそれで絶えたので、酒飲みであることも知らなかった。マンガ家の安部慎一は、若い頃の白山君が「ブルース・リーそっくりの顔と体格」で、喧嘩も強かったと遺稿集で回想しているが、私は気づかなかった。 『夏目さんちの黒いネコ』201〜203ページ
関川夏央が跋折羅で見た白山宣之の作品「写真」の記憶から、編集者へ彼の名をあげ、『夜のクーリエ』というハードボイルド作品でマンガのスクリプトで共作していたと書いている。

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