大正六年(1917)の芥川龍之介の俳句に、「春寒や竹の中なる銀閣寺」という句があります。
年譜を見ると、大正六年四月十一日から十六日まで京都に旅行している。
四月の中旬ごろの京都は、まだ肌寒い日のある時期ですね。
「春寒や竹の中なる銀閣寺」
肌寒い日に、銀閣寺を訪れた龍之介の句でしょう。
京都旅行中の句で、他にこのような句があります。
この句の後に、
「徂(ゆ)く春の人の名とへばぽん太とぞ」
ぽん太とは、祇園の舞妓でしょうか。
この句の後に、「行けや春とうと入れたる足拍子」がつづきます。
「その人舞へるに」という前書きが付いていますから、その人=ぽん太の舞を、龍之介は鑑賞したのでしょうね。