渋谷実監督の「正義派」

 雑誌「一冊の本」2014年11月号の貴田庄の連載「志賀直哉、映画に行く」10が、映画「暗夜行路」の制作をめぐって書いている。
 その中に渋谷実の映画「正義派」について言及している箇所があった。
 「正義派」や「好人物の夫婦」の原作料についてはアメリカ留学中の阿川弘之へ送った一九五六年五月二十一日の航空書簡のなかにある、として次のように引用されている。
 
 《全集の金も六ヶ月位でなくなるので、さうしたら此家を先ず売つてもいいなどいつてゐたら松竹の渋谷カントクから「正義派」、間もなく東宝として池部が「好人物の夫婦」をいつて来たので窮すれば通ずで喜んで承知した、松竹は百万、東宝もその位くれるではないかと思つてゐる、直吉と吉岡君にさういふ事頼んでゐる。  57ページ 》