『政岡憲三とその時代』を読む3

 萩原由加里著『政岡憲三とその時代』を読む。
 第3章 「トーキーは映画を変える」で、「日本における漫画映画のトーキー化」の事情にふれている。
 レコード式トーキーからフィルム式トーキーに移行する時代の考察が展開される。

 二〇年代から活動をはじめていた漫画映画の制作者は、レコード式トーキーを用いて制作していた。
 レコード式トーキーを製作していた人物に、寺内純一、大石郁雄、村田安治、金井木一郎、宮下万蔵、西倉喜代次がいる。
 

 「本格的トーキー漫画映画の登場」によると、政岡憲三のトーキー漫画映画一作目の『力と女の世の中』は、《一九三二年四月、政岡は上京すると、松竹蒲田撮影所の所長だった城戸四郎と面会し、トーキー漫画映画制作の契約を結んでいる。》98ページ
 政岡憲三のトーキー漫画映画一作目の『力と女の世の中』の当時の映画雑誌に掲載されたイラスト入り記事があり、「声の配役」に古川緑波、澤蘭子、三井秀男という俳優の名前が見られる。*1
 また、制作スタジオである「政岡映画美術研究所」に、漫画映画のBGMの音楽を演奏する「政岡映画音楽部」を結成していた。
 楽団12名入りの写真があり、メンバーが手にしているのがアコーディオン、ギター、サックス、トロンボーン、トランペット、ドラム、チェロなどの楽器だ。政岡はサックスを手にしている。
 二〇年代から三〇年代の京阪神間にみられる文化面での「阪神間モダニズム」の影響を著者は見ている。

*1:三井秀男は、1947年に三井弘次という名前に改名している。