秋風とジープの走り無心なれど

 23日は二十四節気のひとつ小雪であった。
 北風がようやく強くなり、山茶花(さざんか)が咲く時期である。
 曇り、最高気温21℃、最低気温13℃。
 立冬が過ぎて、紅葉がまだ見頃である。
 ヒサカキの実を見かけた。黒っぽい実が鈴なりだ。
 小高木といった樹高である。

 ツバキ科の常緑低木。山地の乾いた所に自生。葉は密につき、長楕円形で先が鈍くとがる。雌雄異株。春に白い小花が実になって咲き、黒紫色の実を結ぶ。サカキの代わりに神事に使う地方もある。庭木にする。  『大辞泉

 「秋風とジープの走り無心なれど
 「吾子等に遠き酒へ銀粉小さき蛾
 「蟷螂は馬車に逃げられし馭者のさま


 中村草田男の俳句で、昭和二十年(1945年)の句である。
 秩父の町はずれに妻子を疎開させていた草田男は、約半年空襲下の東都(東京)に自炊生活を送った。
 勤労隊としての生徒を率いて草田男は東京から福島県へ行った。

 「秋風とジープの走り無心なれど」の句に、「再び東都に帰りて、街頭に佇てば、」という前書があります。
 草田男が福島から東京へ戻って街頭で見た光景でしょうか。
 アメリカ軍のジープが当時の東京の市中を走っていた。


 木下惠介監督の映画に『結婚』(1947年、松竹、85分、白黒)があります。
 昭和22年公開の作品は、失業中の父(東野英治郎)、母(東山千栄子)、娘の文江(田中絹代)、その妹(井川邦子)、弟の五人家族で、結婚で文江が九州へ行くことになるのですが、東京駅前を通り過ぎるのはアメリカ軍のジープと路面電車でありました。

 最近、中村草田男について樽見博著『『戦争俳句と俳人たち』を読んでいたら、教え子に由良君美がいるというので驚きました。

戦争俳句と俳人たち

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