『昭和時代』から

公園の桜、ソメイヨシノが満開になり風にゆれている。記念撮影をする人が多い。

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バラ科の落葉高木。エドヒガンとオオシマザクラの雑種といわれる。葉は広い倒卵形。四月ごろ葉より先に、淡紅色から白色となる花が咲く。広く植栽され、木の生長は早いが寿命は短い。名は江戸末期に染井の植木屋が広めた吉野桜に由来。  『大辞泉

 

平凡社から復刻版で出た戦時中の対外宣伝グラフ誌「FRONT」の出版元の東方社について中島健蔵著『昭和時代』に記述がある。

 

東方社の仕事

 ある日、林達夫から電話がかかって、東方社という出版社へ呼ばれ、マレーにおける宣伝戦について話をすることになった。事実、英国の対独宣伝は、実に行きとどいていて、ドイツの「盟邦」である日本人が見ても、ナチスを憎悪しなければならないような本や映画があった。そういう話をした後に、また林達夫からの電話で、東方社の仕事を手伝ってくれと頼まれた。東方社は、参謀本部と連絡があり、対外宣伝のぜいたくなグラフ雑誌を発行しているという。神がかりのばかばかしい国内宣伝とはちがって、ほんものの文化をぶつけるのだという。徴用解除になっても、「戦地帰り」がつきまとい、しかも、戦争前以上に情報局の干渉がひどくなっている。個人的にも、前以上に風当たりが強いらしい。わたくしは、徴用のつづきのような気がした。東方社は、たしかに参謀本部と連絡があったにはちがいないが、実は、憎まれていたのであった。再組織しないかぎり、仕事はつづけられない状態だとわかった時には、もう遅かった。しかし、わたくしは、たちまち深入りして行った。一つには、謀叛気のある連中が集っていたのにひかれたのであった。

 空襲がはじまると、東京の空気も一変した。シンガポールで、参謀本部から来た佐官参謀の一人が、「今に内地が戦場になる」ともらしたことがあったが、それが単なるおどかしではないことがわかった。  179~180ページ

 

 

昭和時代 (1957年) (岩波新書)

昭和時代 (1957年) (岩波新書)