ホンキリシマ(本霧島)の花が咲き始めている。大きさは三センチほどの径で濃く明るい赤が鮮やかだ。葉は丸みのある楕円形で花びらよりは小さい。
多川精一著「戦争のグラフィズム」を読む。
副題が、回想の「FRONT」。
目次
序章 一九四一年秋
1 ふたつの大戦の狭間で
2 それは対ソ宣伝計画から始まった
3 日米開戦前夜、写真取材始まる
4 スタートした戦時国家宣伝
5 連合国に届いていた『FRONT』
6 内外の危機に揺れる東方社
7 軽量宣伝物「戦線」と、つくられた写真
8 戦局悪化のなかの外地取材
9 空襲で次第に機能を失う東方社
10 東方社最後の日々
終章 一九四五年秋
あとがき
「終章 一九四五年秋」の《悲劇、東方社『FRONT』の歴史》より引用。
宣伝というものは所詮、平和であってこそ、その効果を発揮できるのである。対外文化宣伝を目指してスタートした『FRONT』は、最初の号が計画されたとき、世界中は戦火の巷になっていた。そして号を重ねるとともに、その配布は困難になり、占領地の民心は宣伝などで左右される状況ではなくなっていった。だから、ほとんどその本来の力を発揮することなく、最後はBー29による爆撃で、敗戦を待たずに留めを刺されたのであった。 237ページ
今から六十年前の昭和初期の時代から、新しい芸術運動としての写真やグラフィック表現を日本に導入しようとしていた岡田桑三、木村伊兵衛、原弘らは、平和な時代であればもっと早く、先駆者としての輝かしい足跡が残せるはずであった。しかし彼らの仕事が実を結ぼうとする時期が日本の十五年戦争と重なってしまい、その実現には軍部と結んでの宣伝という、不本意な形を取らざえるをえなかった。そしてまた、その出発が開戦と同時だったのも、彼らにとってさらに不幸なことであった。 238ページ
戦争のグラフィズム―『FRONT』を創った人々 (平凡社ライブラリー)
- 作者: 多川精一
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