ジャック・ベッケル監督の映画『怪盗ルパン』

「ゴーモン 珠玉のフランス映画史 世界最古の映画制作会社の軌跡」

《先月に引き続き、映画史を塗り替えてきたゴーモンの歴史を辿るべく、時代を超える傑作を上映します。神出鬼没の怪盗ファントマを躍動感溢れる映像で描き出したルイ・フイヤードオーソン・ウェルズとならぶ話術とフェイクの天才サッシャ・ギトリジャック・ベッケルジャン・グレミヨンマックス・オフュルスロベール・ブレッソンモーリス・ピアラ、そしてジョセフ・ロージー・・・。日本では上映機会の少ない、時代もジャンルも異なる巨匠たちの傑作セレクションをお届けします。 》

 ジャック・ベッケル監督の映画『怪盗ルパン』(1957年、フランス、104分、カラー、Blu-ray、日本語字幕)を鑑賞。

1910年、パリ。怪盗アルセーヌ・ルパンは、得意の変装を武器に次々とお宝を手に入れる。ルパンを見初めた美しい貴婦人ミナ・フォン・クラフトは、自分が仕えるドイツ皇帝カイゼル2世のもとに彼を呼び寄せ、ある依頼をするが・・・。(上映パンフレットより)

 首相夫妻の田舎の別荘で開かれている夜会は優雅にワルツを踊っている。ルパンは車で乗り付けて変装して紛れ込む。そして、首相自慢の絵画を盗むのだが、待たせている運転手二人と連携して見事に盗み、ルパン参上、といった紙切れを額縁の後ろに置き一目散に逃げ去る。パリでは宝石店から宝石をホテルでトリックを使い盗む。別荘の夜会で知り合った貴婦人ミナ・フォン・クラフトを通じてドイツ皇帝カイゼル2世の国へパリから車で拉致されルパンは行く。カイゼル2世から秘密物を部屋に隠しているのだが、その場所を見つけろという命令を受ける。ルパンは隠した場所を見つけたが宝石は盗まず、別の金庫の100万マルクを持って馬で逃げ去る。それを馬で追ったミナはふもとを走っているルパンの姿を確認してにやりと笑顔に包まれるのだった。

 パリの大富豪ラロッシュがルパンの正体なのだが、身元がばれそうになっても機転を働かせて切り抜けていく。夜会服の衣装が豪華、室内装飾の美術も見事、残忍な場面もなく、洒落たセリフとユーモアがある。洒落っ気のあるコメディタッチの映画で素晴らしい。

共同フェアの小冊子から

 書店で、亜紀書房朝日出版社の共同フェアが現在開催中だった。平台に本が並べられていました。ブックリストの小冊子が置いてあったので、手に取ってみました。興味を引く本が目につきます。

 「大人にこそ読んでほしいメルヘンの世界」からは、コマツシンヤの『午后のあくび』でしょうか。「見方や裏側がわかれば、作品がもっとたのしめる」からは、南伸坊の『私のイラストレーション史』になりますか。

 

午后のあくび

午后のあくび

 

 

 

私のイラストレーション史

私のイラストレーション史

 

 

 

サッシャ・ギトリ監督の映画『とらんぷ譚』

 「ゴーモン 珠玉のフランス映画史 世界最古の映画制作会社の軌跡」

 《1895年の創業から現在まで、120年以上に渡る歴史を誇る世界最古の映画制作会社「Gaumont(ゴーモン)」。1911年には、6000もの観客席を擁した映画館「ゴーモン・パラス」をパリにオープンさせ、映画館の経営にも乗り出しました。名だたる映画監督たちの作品を手掛け、映画史を塗り替えてきたゴーモンの歴史を辿るべく、時代を超える傑作を上映します。日本では上映機会の少ない、時代もジャンルも異なる巨匠たちの傑作セレクションをお届けします。》

 サッシャ・ギトリ監督の映画『とらんぷ譚』(1936年、フランス、81分、白黒)を鑑賞。

ギトリが自身の小説「詐欺師の物語」を脚色・監督・主演したトーキー二作目。盗みがバレて、一夜にして孤児となった少年がモナコのカジノでプロの詐欺師となり、カフェで回想録を執筆する・・・。
「ギトリはエルンスト・ルビッチの“フランス人の兄”だ」――フランソワ・トリュフォー  (上映パンフレットより)

  出演、マルグリット・モレノ、ジャクリーヌ・ドリュバック、ピエール・アシ。

 家族が毒キノコを食べて11人が死んだ中で一人生き残った少年がケチな養父に引き取られ、そこを逃げ出した。レストラン、ホテルと転々としてカジノのプロの詐欺師になった男の半生記。

 活動弁士、落語家のような語り口で物語が展開する。小道具、フィルムの反復、再生、恐怖心、笑いと飽きさせない。今見ても古びていない。

つわぶきはだんまりの花嫌いな花

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 晴れた。最高気温26℃。蒸し暑いが風がある。

 ツワブキの黄色い花が見られる季節になった。近づいて観察する。長く伸びた茎の先の黄色の花が美しく見ごろだ。

キク科の多年草。海岸近くに自生。長い柄のある葉が束生し、葉は腎臓形で厚く、上面は光沢がある。一〇月ごろ、花茎が約六〇センチ伸び、黄色の頭状花が多数咲く。葉柄を食用にし、葉・葉柄を民間療法で打撲・やけどなどに用いる。観賞用にも植えられる。  『大辞泉

 引用句は、「つわぶきはだんまりの花嫌いな花」という三橋鷹女の俳句。

 

 「山と溪谷」11月号に、追悼「池内紀さんと『山と溪谷』」(神谷弘之・文、勝峰富雄・写真)が、二ページにわたって掲載されていました。

 池内紀さんの「山と溪谷社の雑誌掲載リスト」があります。誌名、発行年、月号、記事タイトル、種別とリストアップされていました。

 勝峰富雄さんの本に、みすず書房から『山で見た夢』があります。

www.msz.co.jp

 

映画『あにいもうと』

 「没後50年 成瀬巳喜男監督特集」からの一本、成瀬巳喜男監督の映画『あにいもうと』(1953年、大映、86分、白黒、35ミリ)を鑑賞。

 出演は、京マチ子、森 雅之、久我美子浦辺粂子、堀雄二、船越英二、山本礼三郎。脚本は水木洋子キネマ旬報ベスト・テン第5位。

 室生犀星の同名小説の二度目の映画化。兄の伊之吉(森雅之)と妹のもん(京マチ子)は、激しくぶつかり合いながらも、心の底では兄妹愛を通わせていた。時代背景を戦後に移して家族のドラマを描く。(特集パンフレットより)

  五月に亡くなられた京マチ子さんの出演作。兄役の森雅之と妹役の長女の京マチ子の喧嘩のシーンが、二人の口論と取っ組み合いで大乱闘になる。二人の肉体と感情がスクリーンに爆発するような演技である。父親(山本礼三郎)は、昔、護岸工事の石工の頭で多くの人を使って仕事をしていたが、コンクリートの護岸工事に時代が移っていったので、今は落ちぶれている。茶店で家計を支える母親役の浦辺粂子の演技が素晴らしく良かった。次女役の久我美子も好演している。

台風一過

 12日、台風19号で大荒れだった。歩道を歩くのに風に煽(あお)られた。

 13日も強い風が吹き続ける。台風一過、公園の池に睡蓮が咲いていました。

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 「週刊読書人」9月20日号に、「追悼 池内紀」と題して、小宮正安氏の追悼文が掲載されていました。池内紀さんの教え子であった方の追悼文です。池内さんの教師時代のエピソードなど綴られていました。

 小宮正安氏に『モーツァルトを「造った」男─ケッヘルと同時代のウィーン』という新書があると知りました。

www.dokushojin.co.jp

 

モーツァルトを「造った」男─ケッヘルと同時代のウィーン (講談社現代新書)

モーツァルトを「造った」男─ケッヘルと同時代のウィーン (講談社現代新書)

 

 

映画『めし』

「没後50年 成瀬巳喜男監督特集」からの一本、成瀬巳喜男監督の映画『めし』(1951年、東宝、97分、白黒、35ミリ)を鑑賞。

 出演は、上原謙原節子島崎雪子大泉滉浦辺粂子、二本柳寛、杉葉子杉村春子小林桂樹長岡輝子山村聰。脚本は井手俊郎田中澄江。 

林芙美子の絶筆となった未完の小説の映画化。倦怠期にある夫婦が、ささいな出来事からしだいに亀裂を深めていくさまが描かれる。人物の微妙な心理や生活感を、きめの細かい演出で見せ、成瀬巳喜男監督の戦後の復調を示したとされる作品。(特集パンフレットより)

  舞台は、前半は大阪で、後半は東京である。東京から家出して来た妻の姪(島崎雪子)と夫(上原謙)が妻(原節子)を家に残して、大阪を観光バスで遊覧するシーンがあるのだが、バスガイドが戦後六年目の大阪の北浜、御堂筋、大阪城といった復興した都市を案内する。映画で当時の大阪へタイムスリップした気分になる。

 後半、夫に失望した妻が東京の実家へ大阪へ夫を残したままで、里帰りをする。衣料品店を営む妹(杉葉子)とその夫(小林桂樹)の夫婦、母(杉村春子)のところへ帰って安心感からか、ぐっすりと眠り、長い眠りから覚めた原節子の表情がさっぱりとしている。

 台風がやって来て夜の暴風が通過した翌朝の晴れ上がった空と屋根に上がって修復している小林桂樹の作業姿がのどかな一日を予感させる。

 思いがけなく大阪から仕事で上京してきた夫(上原謙)と路上で出くわすシーンも印象的だ。ラストの汽車で二人、大阪へ戻るシーンも。倦怠期の夫婦の繊細な感情をうまく表現している。