多田道太郎の『遊びと日本人』とロジェ・カイヨワ

 多田道太郎の『遊びと日本人』1980年刊(角川文庫)の中で、ロジェ・カイヨワはパチンコについて次のように言う。

 パチンコで得られるものは明らかに眩暈(げんうん)であり、眩暈のみである。しかも、低次元の空虚な眩暈である」(『遊びと人間』)    

 これに対して、来日したカイヨワ氏と対談した多田道太郎は、

 「(中略)カイヨワさんはアリュシナシオンという言葉を使っておられたと思いますが、つまり中毒によってマヒした状態になってしまうとおっしゃたわけですけれども、私はそうではなくて、パチンコは日本人が急激にのびて行く工業社会の中に自分を同化させるための一つの手段であったと思います。文化に順応するという側面を持っているのでして、そういう側面を見逃して、マヒであるとか大衆の愚鈍化であるとか解釈することは、私にはできません」(「読売新聞」昭和四十七年十二月七日付)

 と「パチンコ擁護の説を及ばぬながら述べてみて、反論のかまえなりと示しておきたくなる」として上記のように書いた。