『ニューヨーカー』を読んでいると思い出す植草甚一

ハスの実

 蕪村の句に「半日の閑を榎やせみの声」がある。これは、なんとなく蝉の句の感じがする。もう一つ「蝉鳴くや行者の過(すぐ)る午(うま)の刻」の句は正午頃の時刻に行者が通り過ぎる情景としたら、蝉は蝉しぐれではなく一休みしている時刻になるんだが・・・。
 
 それはさておき、ある時に丸善で『ニューヨーカー』というアメリカの雑誌を読んでいたところ、おや、表紙の絵がソール・スタインバーグではないか? これは、久しぶりだな。と思って本文の方をぱらぱら読んで行くと、表紙の絵のタイトルは『赤ワイン』という題名になっていた。広場か、そんなところに赤ワインの銅像(?)が建っている絵で、これこそスタインバーグの味、ハンバーグではないよ。ナンセンスとユーモアの味です。
 その記事によるとソール・スタインバーグは1999年5月に亡くなったという。
 これは1999年の『ニューヨーカー』8月16日号を読んでいて知ったことである。
 ソール・スタインバーグの展覧会を10月に開くという予定が書かれていた。もう一つ、おやっと思ったのは、たしかその展覧会というのは、スタインバーグにとっては、生前に開いた一回の展覧会を含めて今回で2回目になるという記事だった。
 ふうむ。もし植草甚一が生きていれば、どんな感想を語ったか、聞いてみたい気がする。