小林秀雄の講演テープ

シロツメクサ

 寒さがぶり返してきた。ぶるぶる。風も強く吹いた。夕方からは晴れて来て、八時頃には星空が見られた。冬の星座が南の空へ昇っている。オリオン座やおおいぬ座シリウスが眺められた。これらの冬の星座は、ゆっくり西に傾いて来ている。今日は皆既日食が、アフリカ北部のリビア、トルコ、モンゴルにかけて見ることができる。
 歩道に沿って植えられている芝草の中に、シロツメクサの花が咲いていた。寒風のなかで咲いている白い小さな花を見ると、なんだか気持ちがなごむ。蕪村の句に、

 水鳥も見えぬ江わたる寒さ哉

 『蕪村遺稿』の冬の句にあった。安永六年の句。今日の風景にぴったりだ。
 新潮カセット『小林秀雄講演別巻』〈現代思想について〉(新潮社)を聴く。*1タイトルが〈現代思想について〉となっているが、話されている内容は「横丁の隠居」とか、「年には功がある」とか、「合理的思想のバカらしさ」といったことが語られていて面白い。学問のたのしさをさまざまな例をあげて話していた。聴衆からの質問にも答えている。とても面白いテープだった。