ムクドリをめぐって雑感

ムクドリ

 夕方、ある屋根の上にある事情で上がっていた。電線が水平方向に眺められる。
 ピチピチ・・・ピチピチピチピチと音が聞こえてきた。音のする方にある電柱と電線に黒い塊があった。鳥が群れて電線に群がっている。ムクドリが集まっているのだ。
 これから、ねぐらを目指して帰る前の全員集合の場面かな。
 そういえば、『図書』2006年6月号に、堀江敏幸の連載『バン・マリーへの手紙』の最終回が「ブラック・インパルスのゆくえ」というタイトルで、まさにこのムクドリをめぐって味わいのある文を書いていた。
 内田清之助の『渡り鳥』、昭和十六年に出た本らしい。昭和十七年の『鳥學講話』もある。ムクドリの飛行部隊との遭遇がもたらした体験が、これらの本に筆者を向かわせていく経緯が面白い。灯台にぶつかって死んでゆく「灯台斃死鳥」(とうだいへいしちょう)のことを内田清之助の本にたどりながら、振り返って〈自分ひとりの失態によって電柱斃死なる言葉が生まれたりしないよう、きびしく危険な日々の「渡り」を、これからも湯煎のようにながくしぶとくつづけていければ、と思うのである。〉と連載を締めくくっている。
 深読みがいろいろ出来るなあ。