青紫蘇の苗

青紫蘇

 三日、園芸店で野菜の苗を何種類か購入する。今日、青紫蘇と蔓紫の苗を植えた。
 四方田犬彦の『月島物語ふたたび』(工作舎)で、1999年の川田順造との対談・「月島、そして深川。」と2006年の陣内秀信との対談《「月島的なるもの」をめぐって」》を読んだ。もうひとつ対談で1990年の中野翠との「わが隣人、中野翠」も読む。
 川田さんの関心をもってきた二人の文学者、谷崎潤一郎永井荷風のうち谷崎潤一郎が、同じ江戸時代からのあきんどの家ということで、生活感覚はびっくりするほど似ているんですという話が興味深かった。

だけど、谷崎は関東大震災を機会に、痛烈に東京の野蛮さ貧乏ったらしさを批判した『東京を思ふ』という長文の愛想づかしを書いて関西に移るわけですね。そして日本の風景の原形だと彼が思っている瀬戸内海に近い土地に住んで、王朝物の世界に入っていく。偶然なんですけど、今、僕が住んでいる湯河原の家のすぐ下に、谷崎が最晩年に住んだ家があるんですよ。五八歳谷崎が年上だけれど、生まれたところが隅田川をはさんで直線距離にして数百メートル、二人とも東京下町を離れた末に、ほんとうは東京への愛着を捨てきれなかったといわれる谷崎はだんだん東京ににじりよってきて、最後に住んだところが、また僕の家の数百メートル下、妙な因縁を感じますね。 324〜325頁

 後書にあるように、ある意味で二〇世紀日本のモダニズムの一大実験地であった月島であるが、この「月島的なるもの」は、全国各地に同じように見られるものでもあろう。