小崎泰博の『幻の10年』のこと

睡蓮の花

 朝晩は肌寒い。もうすぐ立冬である。
 夕暮れ時に公園の池に寄ると、睡蓮の花が開いていた。闇の中にひっそりと・・・。
 蕪村の句に、「冬ちかし時雨(しぐれ)の雲もこゝよりぞ」。

スイレンスイレン属の水生植物の総称。池・沼に生え、円形または卵形の基部に切れ込みのある葉を水面に浮かべる。夏、白・黄・赤色などのハスに似た花を水面上に開き、朝夕開閉する。温帯産のものから熱帯産のものまで、品種は多い。日本ではヒツジグサが自生。  『大辞泉

 週末、四方田犬彦の『驢馬とスープ』で「さようなら、岡田史子」という文を読む。
 岡田史子が漫画家として活躍していた時期は、わずか4年にすぎなかったのだ。COMでデビューして・・・。
 1980年のころだったか、小崎泰博の『幻の10年』(東考社)という漫画が自費出版された。
 この漫画は商業誌での出版拒否にあい、自費出版されたのだが、読んで驚いた思い出がある。
 この凝縮された密度の濃い描写と緊張感、いままで見たことのない作品世界であった。作品の最後の場面で、ローラースケートに乗って街路を滑る女の光景がとても印象的で、『幻の10年』が知られずに眠っているのは残念である。
 著者は 今、何処に?

驢馬とスープ―papers2005‐2007

驢馬とスープ―papers2005‐2007