桂文我「花色もめん」

 金木犀の香りがする季節になった。
 桂文我のCD「おやこ寄席ライブ10」に収録の「じゅげむ」「夏の医者」「花色もめん」のうち、泥棒の出て来る落語「花色もめん」を聴く。
 長屋で家賃を払っていない男が風呂に行っている間に、泥棒に入られる。男の家は盗まれるものが何にもない家なのだが、風呂から戻って来て、大家に家賃を払うのを待ってくれという口実に泥棒に入られたことを利用しようとする。大家は、では警察に届けなくてはと言い、警官がやって来る。
 長屋の家から盗まれたものを一つ一つ挙げていくのだが、盗まれてもいない品々を警官の調書に答える。紋付の裏は花色もめんだと伝える。モーニングは色は真っ赤、夕焼け色のモーニングと警官に言う。
 警官「他は、なに盗られた?」
 掛け軸の裏も花色もめん。という風に男は続ける。
 それを隠れて聞いていた(何にも盗るものがなかった)泥棒が飛び出してきて警官と男の間に分け入って来て言うのだった。
 なんにも盗れるもんあらしませんやないか。
 何にも盗っていないぞー。
 警官がいる前に見境もなく出て来る間抜けな泥棒の落語。

おやこ寄席(10)

おやこ寄席(10)