三村明と『姿三四郎』

姿三四郎

 13日、「生誕100年 黒澤明監督特集」が映像文化ライブラリーで始まった。
 《2010年は、黒澤明監督の生誕100年でした。これにちなんで、今月から三カ月にわたって黒澤明監督の特集を開催し、今もなお輝きを失わず、映画の魅力を私たちに伝えてくれる黒澤作品を振り返ります。
 『姿三四郎』(1943年、東宝映画、79分、白黒)を夜の部で観る。観客は40人ほど。
 富田常雄原作。脚本が黒澤明、撮影は三村明である。映画は公開された時の上映時間を、後に検閲でカットした短縮版である旨の説明が冒頭にあった。
 時代は明治十五年。
 姿三四郎(藤田進)と檜垣源之助(月形龍之介)が、強風が吹きまくり雲が飛んでゆく天候の中で枯れ草の繁る原っぱでの決闘の場面が見ごたえがあった。
 『姿三四郎』を撮影した三村明が、ロケでこの撮影を行った日の天候のこと、冬の寒さの中で一発勝負の撮影をした当時の回想を、工藤美代子著『聖林からヒロシマへ』(晶文社)で述べている。撮影日の天候をにらみながら思い通りのシーンを撮ることができた。
 その奇跡的な撮影体験の三村明の回想のことを思い出しながら映画を観た。
 他に、下駄を使った時間経過の描写があり、三村明が撮影した山中貞雄の『人情紙風船』のラストで紙風船が水に流れて行く映像をふと思うのだった。
 14日、『続 姿三四郎』(1945年、東宝、82分、白黒)を観る。撮影は伊藤武夫。 
 『続 姿三四郎』は明治二十年の姿三四郎を描いている。
 パンフレットに、

姿三四郎」のヒットを受けて作られた続編。三四郎は、以前倒した檜垣源之助の兄弟から挑戦を受ける。敵の憎悪の的となり、強さゆえに苦悩する三四郎の姿を描く。黒澤監督は、檜垣兄弟の末弟・源三郎の衣裳や動作に能の要素を取り入れて演出している。

 道場破りにやって来た檜垣兄弟二人のうち末弟・源三郎の衣裳と動きがまるで能の所作であるかのような身のこなしである。斬新な演出をしている。
 伊藤武夫のカメラワークは、クローズアップが多用されている。小夜(轟夕起子)と三四郎(藤田進)が神社の石段で出会う場面などで・・・。雪の中での果し合いの決闘のシーンと、勝負がついた後の三四郎と檜垣兄弟の三人が和解へとつながる一夜の推移の描写が見事である。