アキ・カウリスマキ監督の『カラマリ・ユニオン』

カラマリ・ユニオン

 今月(9月)は、アキ・カウリスマキ監督特集。5作品が映像文化ライブラリーで上映される。
 アキ・カウリスマキ監督の映画『カラマリ・ユニオン』(1985年、フィンランド、80分、白黒)を鑑賞。原題はCalamari Union。
 出演はマッティ・ペロンパー、プンティ・ヴァルトネン、サッケ・ヤルヴェンパー。
 アキ・カウリスマキ監督特集パンフレットに、
 

フランクという同じ名前の15人の男性が理想郷、エイラを目指して旅立つ。彼らは様々な方法でエイラへ向かうが、その道のりは険しく、次々と倒れてゆく・・・。理想郷を探し求める男性たちの皮肉な運命を描く。

 エイラという理想郷(?)へ旅立ったフランクという同じ名前の男たちのロード・ムービーである。
 男たちは次々と無慈悲にも命を落としてゆくのだった。
 それは唐突に起こり唐突にあっけなくフランクらは倒れてゆくのだ。
 たとえば、フランクが美女に出会い、近づいて行くと、もう一人のフランクが現われ、近づいて行ったフランクの方が女の出したピストルで、皮肉にもあっという間に撃たれ倒れてゆく。
 女は外へ止めていたスポーツカーに乗るや風のごとく、どこかへ走り去ってゆくのだった。
 ライブ演奏のシーンが途中何度かあり、フランクたちが熱唱するのに呼応して聴衆も熱狂し歌い踊る。
 犬が駆け寄ってくるシーンが、必ずと言っていいほどアキ・カウリスマキ監督の映画にあるのだが、『カラマリ・ユニオン』でも、途方に暮れているフランクという同じ名前の男たちがうずくまっているところへ、おなじみの犬が駆け寄って来るシーンがあった。
 ラストで、フランクという名前の二人がひとり乗りのボートで、エストニアへ渡ろうと、ヘルシンキの海岸から海の彼方(かなた)の国、エストニアへ向かうのだった。
 『愛しのタチアナ』(1994年、フィンランド、62分、白黒)という映画が、同じくロード・ムービーの男女四人の物語で、女の一人の故郷のエストニアへ客船で渡るのだった。
 そのうちの一人の男をマッティ・ペロンパーが、この『カラマリ・ユニオン』のフランクの一人で出演していた。

 ロード・ムービー、ユーモアとシュールでナンセンスなシーン、ロックンロールをはじめ懐かしの音楽、おなじみの犬、ヘルシンキの街、カウリスマキの映画でおなじみのエッセンスが感じ取られる。