《各映画会社との協力のもと、デジタル技術を活用したフィルムの修復・復元に取り組んでいる東京国立近代美術館フィルムセンターの成果を一挙公開するものです。》
「蘇ったフィルムたち〜東京国立近代美術館フィルムセンター復元作品特集」が全国巡回している。
その作品特集の一本、伊藤大輔監督の映画『忠次旅日記』(1927年、日活大将軍、107分、染色、無声、不完全)を映像文化ライブラリーで鑑賞しました。
出演は、大河内傳次郎、中村英雄、澤蘭子、伏見直江。撮影・唐沢弘光。
赤城の山から逃げ延びた忠次は、越後の造り酒屋に番頭として身を隠すが、やがて正体が発覚し、追われる身に・・・。激情ほとばしる殺陣、秀逸なユーモア、緩急を心得た伊藤大輔の演出が冴え、逃亡の旅を続ける忠次のドラマはクライマックスを迎える。(特集パンフレットより)
上映の前に、学芸員による解説がありました。
『忠次旅日記』のフィルムの第二部「信州血笑篇」の一部分と第三部「御用篇」の大部分が1991年に広島で発見された。
アナログ復元の後に、デジタル修復・復元と染色(着色処理)した。
本編の上映前に、参考として発見されたフィルムプリントの状態とアナログ復元した状態とデジタル復元し染色を加えたプリントの三種類が上映されました。
とてもきれいに復元されています。染色での着色も見事なものです。
今回の上映は活動写真弁士・澤登翠さんの活弁で上映されました。
国定忠次を大河内伝次郎、忠次の友人の遺児の勘太郎を中村英雄、越後長岡の造り酒屋の娘お粂(くめ)を澤蘭子、妾のお品を伏見直江が演じている。
越後の長岡の造り酒屋の番頭になった忠次と造り酒屋の娘のお粂(くめ)とを描く伊藤大輔監督の演出は前半の見どころのひとつでした。
後半、子分たちに戸板に乗せられて国定村へ護送されて行く忠次。
国定村で迎える妾のお品、再会の喜びの時は長くは続かなかった。
半身不随で寝たきりになった忠次を看病するお品。だが、子分に裏切り者が出て、隠れ家が捕り手の役人に包囲された。
子分が捕り手の手から親分の忠次を守ろうと奮戦するが、次々と倒されてゆく。
多勢に無勢で、忠次はついにお縄に掛かるのだった。
深刻な場面が多いのだが、ユーモラスな演出も見事なものです。
唐沢弘光の撮影技術も完成度が高いです。
澤登翠さんの活弁もよかったです。
国定忠次(大河内伝次郎)