ホセ・ルイス・ゲリン監督の映画『ベルタのモチーフ』


 「ホセ・ルイス・ゲリン映画祭」が23日から映像文化ライブラリーで始まった。

 「シルビアのいる街で」が劇場公開され、その独創的な映像表現で日本の映画ファンに衝撃を与えたホセ・ルイス・ゲリン監督。「ミツバチのささやき」(1973年)や「エル・スール」(1983年)で名高いビクトル・エリセが、“今のスペインで最も優れた映像作家”と断言する彼の特集上映を開催します。
 映画の未来を指向する彼の作品群は、商業映画とは一線を画す究極の映像芸術。時空を超えた映像のコラージュ、緻密な音響設計、光輝く美しい場面が私たちを映画の桃源郷へと誘います。幻の処女作と呼ばれた「ベルタのモチーフ」をはじめ、6作品を一挙上映します。
 ホセ・ルイス・ゲリン監督の映画『ベルタのモチーフ』(1983年、スペイン、120分、白黒)を観た。
 出演は、シルビア・グラシア、アリエル・ドンバール、イニャキ・アイエラ、ラファエル・ディアス。

 「ホセ・ルイス・ゲリン映画祭」パンフレットより引用。

 ゲリンの長編第1作は、陽光あふれる森、川のせせらぎ、画面いっぱいに広がる草原、曲がりくねって地平線まで続く一本道、風にそよぐ麦の穂、そして自転車に乗る少女で出来ている。父の農作業を手伝うベルタは無口な娘。ある日、草原で不思議な帽子をかぶった男と出会う。それ以来、普段の生活に波風が立ち始め、やがて町から撮影隊がやってくる・・・。思春期の少女の内面を映画の原風景として描いた衝撃のデビュー作。

 地平線までつづく草原と畑の中の一本道。
 スペインの農村風景。父の運転するトラクターに乗っている娘のベルタは小学校高学年くらいの少女である。
 弟がひとりいる。二人とも夏休みで家で農作業を手伝っている。
 時には、家族で近くの森へピクニックに出かける。
 野外で料理を作って食べたり、家族で森の小川でザリガニを捕まえて楽しむ。
 ある日、町から一人の男が村の一軒家へ引越しして来た。
 男は村人から変人と噂されていた。
 ベルタは家で搾乳したミルクを容器に入れて自転車で配達し、男の家の前に置いて帰っていた。
 ある日、森でベルタが母や自分も使うカモミールを探していた時に、ミルクを届けるのを日課のようにしていた家の男が森の木の下で読書をしていた。
 男はベルタに気がつくと、一緒に探してあげると言い、二人で一杯カモミールを集めた。
 カモミールを入れる籠(かご)が家にあるからと二人で家の前まで行った。
 男が家の中に入って見えなくなった時に、そのときトラクターで道を通りかかった父が、娘に気づいて「ベルタ!」と呼びかけた。
 ふと、我に返ったベルタは父のトラクターの方へ向かって走って行った。

 ある日、ベルタは麦の穂の中から、散策が好きだと言う男が草原を散歩している光景を目にした。
 だが、まったく突然に男は、ピストルを取り出すと頭を撃って死んでしまう。

 死んだ男の妻が村へ町からやって来た。遺留品を引き取って帰るのだが、男がかぶっていた帽子、前と後ろにつばが長い形の帽子を妻は懸命に捜していたが、とうとう見つからない。
 ベルタは男が自殺した現場で、男のかぶっていた帽子を地面に埋めて隠していたのだった。
 
 またある日、映画の撮影ロケ地を探す自動車の隊列がやって来た。
 その後、村へ撮影本隊が自動車の隊列を組んで多数俳優と撮影スタッフとが到着する。
 撮影隊の女優が馬に乗る練習で草原を走り回った。 
 馬が休んだ所で脚で地面を掘りはじめた。女優が気がついて馬の掘る地面をみずから掘った。
 掘ると、ベルタの隠した男の帽子が出て来た。
 そしてある日、撮影隊が去った。夏休みの終わったベルタと弟は学校へ行く日を迎えたのだった・・・。