先日、「波」2016年12月号の江藤淳の講演「為替と念書――『漱石とその時代』余話」を読んだ。
1993年11月12日の紀伊國屋ホールでの講演採録を掲載している。講演が面白かった。
昨年の十二月九日が漱石没後百年。今年の二月で生誕百五十年を迎える。
一部引用すると、
文学者を論じる時に、やはり経済生活というのは非常に重要なものだと思っております。この作家の経済生活はどんなものだったか、所得税を払っていたかどうかなどは、きわめて大事な点です。 64〜65ページ
(前略)今、岩波から全二十八巻別巻何冊とかいって漱石の全集が出て、菊判の箱入りハードカバーでうやうやしく飾ってあると、文豪が書いた大作だとお思いになるでしょうが、漱石はそんなものを書いていたのではない。漱石は小説記事を書いて、それで月給を二百円もらっていたのです。 65〜66ページ