対談「星条旗と青春と」を読む3

 片岡義男小林信彦の対談「星条旗と青春と」の「一九五〇年代 蜜月の終り」に、片岡義男の「ぼくはプレスリーが大好き」と佐藤忠男長谷川伸論について触れている箇所がありました。

 一部引用すると、

 小林 (前略)それと、五〇年代というとやっぱり触れなきゃいけないのは、片岡さんの「ぼくはプレスリーが大好き」という本は、三一書房の初版は読んでなくて、角川文庫版で初めて、出たときに読んだんですけどね、そのときに、ああ、どうしておれ、もっと早く読まなかったんだろうという気がしたのは、「ハイヌーン」と「シェーン」をつまらないと書いているのは、それまでないですからね。ぼくはひそかにそう思ったけど、書けないですわね。「大いなる西部」もつまんないね。
 片岡 アメリカの力が落ちていく兆候だったと思います。
 小林 「ハイヌーン」が五二年ですよ、たしか。「シェーン」が五三年です。それでね、これはまた、片岡さんのは非常にはっきり書いてあるんだ、いろんなことが。おもしろいんだ。ぼくは笑ったんだけども、要するに、「ハイヌーン」が当時<大人の西部劇>といわれたわけですよね。何が大人かわからないけれど。片岡さんの文章では「ただの西部劇を「大人の西部劇」としてよろこんでいると、早くも一九五三年には「シェーン」に対して感動の拍手をおくることになってしまうのだ」ということでね。要するに、「ハイヌーン」もつまらないし、「シェーン」もつまらないということ。ぼくは見たとき、ほんと、つまらなかったですよ。「シェーン」なんて、何で日本人が、あんなに騒ぐのかわからなかった。ま、長谷川伸の股旅物(またたびもの)と似てるということは非常にあるんですよね。佐藤忠男の最近の考証だと、長谷川伸が西部劇の影響を受けているんじゃないかというんですよ。サイレント時代のね。ウィリアム・S・ハートとかなんかを見て書いたんじゃないか、と。  81〜82ページ

ぼくはプレスリーが大好き (角川文庫 緑 371-1)

ぼくはプレスリーが大好き (角川文庫 緑 371-1)