毎日新聞の日曜版で、「今週の本棚」に川本三郎さんが池内紀ファンにお勧めの本を紹介書評をしている。「この3冊」である。
2、『罪と罰の彼岸 【新版】 打ち負かされた者の克服の試み』(ジャン・アメリー著、池内紀訳、みすず書房)
「この3冊」からの一部を引用すると、
《ドイツ文学者の池内紀さんにとって、なぜゲーテやシラーを生んだ国がナチズムに支配されてしまったかは、大きな課題だった筈(はず)だ。
2は、そんな池内さんにとって重要な仕事。レジスタンスに参加し、逮捕され、アウシュヴィッツなどの収容所に送られ、奇跡的に生還した思索者が、戦後、約二十年間の沈黙を破って発表した収容所体験記。これを訳した時は、「ドイツ語を勉強してよかった」と語っていた。この本が二〇一六年に復刊されたことは喜ばしい。
このナチズムへの心の痛みをともなった深い関心は、近年の仕事、トーマス・マンを論じた『闘う文豪とナチス・ドイツ』(中公新書)と『ヒトラーの時代』(同)にも受け継がれている。そこにドイツ文学者としての誠実がある。》