カエルと『古本探偵』

カエル

 晴れて気温も高いが、乾燥した強い西風で爽やかな日であった。
 公園のバラ園に寄る。強風で花が散っていた。残ったバラの花はドフトボルケかな。
 池を訪れる。睡蓮の花が先日よりも多く開いていた。ハスの葉が増えている。睡蓮の花にデジカメを向ける人が入れ替わりやって来る。おやっ、蛙を見つけた。二十センチメートル離れて二匹が向かい合っている。
 大型電器店に寄った後、書店で『新刊展望』2007年6月号をもらう。堀江敏幸の「細いつながり」を読む。ふーむ。思い出は、語ることによってしか生まれない、と。『めぐらし屋』をめぐって書いている。
 河内紀の『古本探偵』(北宋社)で、「ふたりの杉浦茂さん」を読んでいると、一度読んだことがあるような気がする。
 それは、さて置いて「すらまとじゃらん」が興味を引いた。
 岩崎栄『萬歳』(泉書房/昭和十九年五月刊)という本で、《タイ、シンガポールなど当時の「南洋」に駆り出された作家や画家たちのありさまを、軽い読み物にまとめた小説だが、その導入部に、井伏もふくめた徴用グループの描写がある。》
 岩崎栄が東京から一緒だった海音寺潮五郎の他に、北町一郎、高見順、北林透馬、倉島行二郎、小田嶽夫豊田三郎山本和夫、寺崎浩、里村欣造、小栗虫太郎井伏鱒二といった作家が大阪の練兵場に集った。
 徴用グループは昭和十六年一二月八日を、台湾海峡を南へ向かっている途中で迎える。

 目的地は知らされず、集合場所と到着時間を記した命令書が、「国民服着用、夏服一、二着用意、日本刀を携行されたし」という注意書きと共に配達される。徴用期間は約一ヵ年の予定とあるのみ。大阪の練兵場に「ざっと三百人」集合したのが十一月二十一日。  155頁

 作家、画家、新聞・雑誌記者、写真家、映画・放送関係者、印刷工などがいたという。

 軍隊内での職務も身分もはっきりせず、一週間ここに留め置かれたので、毎晩酒が入って立ち回りも起きた。
「井伏が泥酔し、長刀をふり廻はし笛のこはれたやうな奇声を発し『何をかくさう拙者は近藤勇でござる』と詰寄って来た。逃げて帰る。  155〜156頁